麻布テーラーのシーズンテーマの秘密。

夏休み明けは、麻布テーラーでは秋冬シーズンの本格スタートという位置づけになります。このブログも夏休み明け一発目、ということで麻布テーラーの2015-16年秋冬シーズンのコレクションテーマについてお話しします。

今シーズン(2015-16年秋冬シーズン)のテーマは、「URBAN COUNTRY(アーバンカントリー)」にしました。シーズンテーマは、社長が自ら決めています。もちろん、私も国内外の展示会後に打ち出したいMD(商品)方向性を提案しながら最終決定をするのですが、社長自ら決めるなんて意外に思われるかも知れません。しかし、すべての核となるコンセプトになるので重要な意味を持っているのです。

商品構成はもちろんのこと、シーズン毎に書いてもらっている綿谷画伯の広告ビジュアルもそのコンセプトに沿って書かれます。これも、いちいち社長が細かく指示をします(汗)。それを、綿谷さんと我々が具体化するような作業になります。意外に大変です(笑)。

その完成品がこれになります。

今シーズンはスコットランドのハイランド地方(=カントリー)が舞台。休日に乗馬(=カントリー)をするために来ていたパートナーをマセラッティ(=アーバン)に乗って迎えにくる。そのスタイルは、プリンスオブウェールズのスーツ(=アーバンカントリー)。馬からスポーツカーに乗り換えるなんて、まさにアーバンカントリーです!要約するとこんなストーリーです。次にシーズンテーマについて私が書いた文章です。

「URBAN COUNTRY(アーバンカントリー)」

ルールは破るためにある。その為には先ずルールとは何かを知れなければならない。

トレンドとは常に生まれては進化し、移り変わっていくものですが、トレンドの中で本物として残るファッションでひとつだけ確かな事実、それはルールを知りながらもルールを密かに破ったものです。

紳士服の着こなしのルーツにもなる16世紀から20世紀初頭にかけて、事実上イギリスの社会をリードしていたジェントルマン達の服は、一見すると伝統に沿ったルールが多く堅苦しいものに見えるかもしれません。

しかし、決められたルールの中で自分のスタイルを見出していくことこそが、ジェントルマンの魅力でもあります。決まり事のない勝手気ままなスタイルに、真に美しいと言えるもが果していくつあるのでしょうか。20世紀最大の伊達男と知られているエドワード8世こと、ウィンザー公もそのひとり。不自由なことは自由であり、自由なことこそ実は不自由であることを知っているからこそできることだと思います。

現代においても自分のスタイルや自分流儀を作っていく人、つまり本物の個性をお持ちの人こそが、麻布テーラーが応援する頑張るビジネスマンでありプロフェショナルであると考えています。

今シーズンのテーマに掲げている「URBAN COUNTRY(アーバンカントリー)」には、2つの意味があります。ビジネススタイルのルールを守りながらトレンドである英国のカントリーサイドのフィーリングを取り入れた「アーバンカントリースタイル」。もう1つは、ビジネスという緊張感の中でもリラックスした快いテンションで過ごす為の「アーバンカントリームード」です。

我々は、単に衣料品をお届けするだけではなく、お客様に少しでも精神的に豊かな生活を送っていただけるような「衣料文化」をお届けしたいと念じながら、お客様の個性というスタイルをお手伝いするアーバンカントリーなラインナップをお届けします。

2015.8.17 麻布テーラー クリエーティブディレクター 上月 剛

最後に、私が今シーズン仕立てたアーバンカントリーなスーツはこちらです。ドネガルツィードというカントリーテイスト溢れる素材ですが、ネイビーカラーをセレクトしてベステッドスーツにすることで、都会的にアップデイトさせました。これであれば、ジャケットやベストを単品使いするなど、着回しの幅も広がります。実はこのスーツにはもうひとつ「アーバンカントリー」な仕掛けが潜んでいます。それは、またの機会にお知らせますね(笑)。

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