麻布テーラーの目指すところ。

麻布テーラーの目指すところ。

先週の関西に続き、今週は関東の店舗スタッフの大忘年会が行われました。関東のほぼ全スタッフだけではなく、本部からは社長や副社長も参加する大忘年会です。ベテランの大先輩から、新卒のフレッシュマンまで、この沢山の元気一杯の店舗スタッフによって麻布テーラーは支えられています。麻布テーラーの販売に従事するスタッフは、採寸などのテーラリング業務だけではなく、時にはお客様のパーソナルスタイリスト、時にはデザイナー、時にはマーチャンダイザーにもなるスキルを要する重職です。来年もこの仲間と一緒にお客様にあったパーソナルな洋服をご提案できるように真面目に取り組もうと思います。

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さて、元気といえば、近年はオーダースーツマーケケットが元気ということで、大手紳士服チェーン店までオーダービジネスに本格参入して話題になっています。麻布テーラーがその先駆者と業界では言っていただくのですが、私も良く質問されるのが、新規参入されているテーラーと麻布テーラーの違いについてです。

 

正直、私自身が他社さんのお店をまわり、スーツを仕立てたことがないので、他社さんのことは良く分かりません。ただ、言えることは、大手紳士服店名を良い意味で表に出さずに、一見するとテーラーに見えないスタイリッシュな店構えで、最新のコンピューター技術を駆使した接客提案をするなど、とにかくハイカラ(笑)になっているようです。また、有名生地ブランドが2着買えば安くなるといったバーゲン的手法も多いようです。どちらにしても、麻布テーラーが進めていきたい方向感とはかなり違いますが、スーツをオーダーするという行為自体が一般的に広まることはとても嬉しいことでもあります。本音をいえば、麻布テーラーのお客様、浮気はしないでください!ですが(苦笑)。

 

冗談はさておき、麻布テーラーの年に一度の唯一のセール「オーダーシャツフェア」が迫っております。そのためにという訳だけではありませんが、麻布テーラーのオーダーシャツについて、ナント、ナント、ナント、経済小説 「ハゲタカ」シリーズの著者として知られる、真山仁先生がショートストーリー書いてくださいました。この文章を読んでいただければ、麻布テーラーが考えるオーダーシャツだけではなく、麻布テーラーが目指すところの本質を感じていただけるのではないかと思います。詳しくは、後日にこのブログでお話ししたいと思いますが、先ずは真山仁先生のショートストーリーを読んで見てください!

 

 

 

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デキる奴はそこにこだわる                         真山 仁

 

どうしても勝てない先輩(ヤツ)がいる。

どれだけ努力しても、新しい技を覚えても勝てない。才能の差と言われてしまえば

それまでだが、その分俺は、努力してきた。なのに先輩は努力の片鱗も見せず、

いつも軽々とハードルを越えて、ディールを成就する。先輩と俺で何が違うのか……。

バーで二人っきりになった夜更け、俺は酔ったふりをして、先輩に疑問をぶつけた。

「オーダーメイドのワイシャツだよ」意味不明だった。

だが、それ以上何を聞いても笑ってはぐらかされた。挙げ句に俺は酔いつぶれ、

先輩の家に転がり込んでしまう始末。

翌朝、激しい頭痛と吐き気を覚えて目覚めた時、先輩はシャワーを浴びていた。

惨めに唸っている時、昨夜の言葉を思い出した。

オーダーメイドのシャツ――。

俺はベッドから這い上がり、

先輩のクローゼットを覗いた。

どれも俺が着ているシャツと変わらない。

首元のタグに目がいった。

いずれもが、同じ店の名だ。

「ただ、オーダーメイドのシャツをつくっても無意味だぞ。

シャツは俺らの戦闘服なんだ。機能性、肌触り、そしておまえのガッツが

表出する輝きを放つシャツを探すことだ」

シャワーを浴びた先輩が立っていた。

オーダーメイドでワイシャツを作る男なんて、単なる成金趣味だと思っていた。

それでも俺は、半信半疑で先輩が常連らしい店を覗いてみた。

先輩から紹介してもらったと告げると、「じゃあ、生地選びから致しましょう」と

店員が言った。先輩は、そこにいつもこだわっていると教えてくれた。

「十種類以上は試されましたよ。闘争心が湧くような着心地が欲しいとおっしゃって」

ずらりと並べられた生地を見て、今まで知らない世界がそこに広がっていた。

実際に手で触れ、肌に当ててみると、同じに見えた生地でもそれぞれ違う。

自分に合う風合い、見栄えがよく見える光沢、いろんな個性がシャツに対する

俺の固定観念を破った。試しに一着作ってみた。

生地だけでなく、襟、袖、ボタン、そして寸法を測ってもらったできたてのシャツに

腕を通した瞬間、背筋が伸びた。忘れていた初心が湧き上がってきた。

たかがワイシャツだと思っていたものが、明らかに俺だけの戦闘服に替わった瞬間だった。

code number:SF31200――四度目の正直で辿り着いたジャストフィット。

最高にして最強の一着を身につけた瞬間、一つ分かったことがある。

誰かと比べているウチは、青二才なんだ。

闘う相手は、誰でもない俺自身だということを。

俺の相棒――麻布テーラー。

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