#2025年秋冬シーズンテーマ

皆さま、お盆休みはいかがお過ごしでしたか? 私はというと、例年通り、生まれ故郷の新潟へ帰省してお墓参りをしてきました。今回は長男と次女を連れて、3人での小旅行。子供たちは「お盆玉」と「美味しいごはん」が目的のようですが、祖父母にとっては、いくつになっても孫は可愛いようです。 久しぶりに、次女が「海に行きたい」と言い出して、幼い頃によく連れて行った近くの海水浴場へ。懐かしい海の家でラーメンを食べながら、親子で夏を満喫しました。あの頃は浮き輪が手放せなかったのに、今ではスマホが手放せないようです(笑)。

さて、そんな夏の余韻に浸っている間にも、麻布テーラーでは秋冬シーズンがスタートしております。私のブログも、シーズン一発目は恒例の“テーマ語り”から。毎度のことながら、ここからが本番です。
麻布テーラーは、お客様のご注文で成り立つオーダーショップ。ですので、一般的なブランドのようにコレクションテーマやMD(商品政策)があるのは、ちょっと珍しいかもしれません。ですが、そこは“麻布流”。ファブリックバイヤーが世界の服地見本市「ミラノウニカ」でトレンドをキャッチし、既製品の見本市「ピッティウオモ」でカラーやスタイリングの傾向を確認。そして、それらを麻布テーラーのフィルターに通して、品格あるリアルビジネスマンの皆さまにふさわしいシーズンコレクションを組み立てていきます。
このコレクションを参考に、お客様自身が“デザイナー”のような感覚で、自分の感性を加えながらパーソナルウェアを仕立てていく。そんなスタイルが、麻布テーラーの醍醐味です。
……と、さらっと言いましたが、実はこの作業、毎シーズンなかなか骨が折れます(苦笑)。ドレスウェアは大きな変化が少ない分、細部の積み重ねが命。地味に見えて、実はとてもクリエイティブなんです。 さて、今季のテーマは「DRESS RUNNER」。1981年公開の英国映画『炎のランナー』(ヒュー・ハドソン監督)からインスピレーションを得ています。
「DRESS RUNNER」
テーラードスタイルは、ファッションウェアとしての側面をますます強めています。イギリスの伝統的スタイルにとらわれることなく、イタリア、フランス、アメリカの着こなしを自由にミックスするのが当たり前であり、ビジネスはもちろん、セレモニアルなスタイルにも、程よくカジュアルな要素を取り入れ、自分らしさを表現することが許容されています。とはいえ、ある程度のルールを守ることも重要です。何でもありでは、単に独りよがりなスタイルになりかねません。
今シーズンの麻布テーラーは、1981年公開の英国映画『炎のランナー』(ヒュー・ハドソン監督)にインスピレーションを得て、「DRESS RUNNER」というテーマを掲げました。
様々な困難に立ち向かいながら、1924年のパリ五輪でのメダル獲得を目指す二人の英国人ランナーを主人公に据えたこの映画では、フォーマルはもとより、ツイードスーツ、ブレザー、チルデンセーターといったアイテムの、当時のリアルな着こなしも学べます。まさに古き良き英国ファッションの教科書です。 麻布テーラーは、劇中のクラシカルなファッションの普遍の魅力はもとより、そこに潜むスポーティーでカジュアルな要素にも着目。あの世界観に各国のエッセンスをミックスして今らしくアップデートすることが、ルールを逸 脱することなく自由な個性演出が楽しみたい皆様の手助けになると考えています。麻布テーラーが提案する秋冬の新しいテーラードスタイルを、どうぞお楽しみください!
最後に、今回のイラストの舞台は、あのケンブリッジ大学。しかもトリニティ・カレッジの中庭という、知性と歴史が香る場所。 映画『007は二度死ぬ』では「ケンブリッジで東洋言語が首席だった」とボンドが語っていましたが、映画『炎のランナー』の舞台でもあり、イラストのモデルでもある林信彦氏の外叔母の母校(という設定)でもあるこの場所。そんな由緒正しい中庭で、任務を終えた林氏が女性と待ち合わせ。しかもいつものシティスタイルではなく、『炎のランナー』でも多く登場していた、カントリーなホームスパンスーツを纏い、トヨタ2000GTで登場!ちなみに、映画『007は二度死ぬ』のボンドカーはトヨタ2000GTなので、分かる人には分かる細かい設定です。さすが画伯(笑)。