夏が来れば思い出す、紺無地ジェントルマンの話。

夏が来れば思い出す、紺無地ジェントルマンの話。

福岡天神店の古賀です。ブログをご覧いただいている皆様、暑中お見舞い申し上げます。

毎年この暑い時期になると思い出すことがあります。

今回は私にとって教訓となったことをコラムしたいと思います。

※このカルテはコラムストーリーに基づくイメージを作成したものです。実際のものとは違います。

「スーツを追加購入したいと思っているのですが今まで紺系しか作ったことなくて…、違う色にした方が良いですかね?」

このお客様は当時のご年齢で50歳台後半の方。私よりひと周りほど年上で紳士的な方だった。週末だというのに当店で購入されたスーツを必ず着用してご来店くださる。そのいで立ちは端正な着こなしでありながら、その方の個性となって醸し出されている。スーツの注文ごとに必ず3枚注文される140双の白シャツに紺無地ネクタイしか結ばれない。しかし上衣には必ず白いリネンチーフを差してある。足元は光りすぎず適度な具合で磨かれた英国製と思われる黒のキャップトゥシューズ。サイズは当時主流だったスリムフィットではなく、適度なゆとりを持ったクラシカルなサイズ感を好まれた。仕事中はほぼジャケット着用という前提での服地選択ではあったが、それまでの5着ほどは汎用性のあるオールシーズンタイプの紺無地を私は薦めて(しまって)いた。

洋服に関してご自分のスタイルを確立されているお客様だったので、そのようなお尋ねは私にとって少し意外で突拍子なことと感じていた。そこで私の返答は、

「いや、○○様は紺のスーツがお好きでいらっしゃるので無理に違う色にしなくてもいいと思います」

「実際にそういう(特定の色しか作らない)お客様もいらっしゃいますが、そういうお客様ほど"粋"で素敵な方が多い」

「ワードローブは色数を広げるよりは、好きな色や服地素材を深掘りするような揃え方が"○○様らしさ"を自然に表現出来ると思いますし、なんといっても着用なさっているご自身が落ち着いて物事に対応できるはずです」

というようなことを言ったと思うが、その時以降他のお客様からも同じような質問があった時は確信めいた様に同じような返答をするようになってしまった。

結局、その時に注文頂いたのはド-メルの"TONIK"の紺無地。混同しがちな"TONIK WOOL"とは織られている糸が全く違うシリーズ。"TONIK"は30年以上前まではドーメルの看板シリーズでモヘアの混率違いで2タイプが展開されていた。今回のお客様の要望は「夏物」だったので比較になっていた服地はモヘア混率の高い"TONIK"とキッドモヘア混の"SUPER BRIO"だったが、ご自身の使用環境で総合的に使いやすい方はどっちか?という事になり最終的に"TONIK"のモヘア混率が少ない方の紺無地で承ることになった。

その一か月後にTONIKスーツは仕立て上がりフィッティングも終了した後にお客様の方から冬物を作っておこうという事になり、フランネルの最高峰と案内した"FOXのクラシックフランネル"の紺無地を再追加注文をスーツの引き取りの場で頂いたのには少し緊張した。その理由は受注金額自体が高額だったこともあるが、オールシーズンタイプしかお薦めしていなかった自分に対しての反省の念が緊張感にすり替わっていた。会話の中から見えてくる顧客の要望を叶えるような服地を薦めているつもりだったが、お客様をワクワクさせるような提案をしていなかったことに反省した。

それから約1か月後にFOXフランネルスーツをピックアップに来られた際にお客様から言われた。TONIKスーツを決めたときの私との会話でひらめいたそうで

これにして良かったよ。色のバリエーションを追求するより素材の深堀をすることは愉しいですね。「旬を愉しむ」っていうことはこういう事ですね!これからも紺のスーツにします!

とおっしゃっていただき、正直救われた気持ちになった。

2005年の小泉政権下で始まった"クールビズ"は注文服の服地の薦め方を大きく変えました。"温暖化対策のための地球環境改善"の目的は別として、その政策実現の具体的プロセスは「GW以降の夏期はジャケットやネクタイを着用せず、それ以外の季節をオールシーズン的な素材のスーツで仕事をすること」だった。そんな社会的な流れに合わせるように私共の提案も「ノータイやパンツルックスを推奨しながら、一方ではオールシーズン用の服地の拡販という無理な引き算と都合のいい矛盾をごっちゃにするような提案」となっていった。それは今でも多かれ少なかれあり、そのような流れは季節に合わせて服を買って装う愉しみを半減化し、先述のようなお客様のお尋ねを発生させることとなってしまっている。

ここで言いたいのはクールビズの政策自体が洋服屋にとって愚策と言っているのではなく、顧客の要望や嗜好は多様に存在していることに気づかず、それを叶えるような洋服の薦めができていない私にそのお客様が気づかせてくれたことに感謝したいということなのです。そのお客様から頂いた「旬を愉しむ」というフレーズが注文服における服地提案では非常に重要であることを、そのことをきっかけによく考えるようになりました。

夏が来れば思い出す紺無地ジェントルマン様。

今でもスーツを着ていらっしゃいますか?私はいまだに貴方様を越えることができていません。

お元気であることお祈りしています。

福岡天神店 古賀

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