麻布テーラーの人々 赤塚武継さん (THE GOAL 代表取締役 社長執行役員)

「麻布テーラーの人々」と題し、麻布テーラーと深く関係のある一線で活躍をされている方々にお話をうかがう本連載。今回は、国内外のファッションブランドを中心に、広く広告事業を展開している「ザ・ゴール」の代表、赤塚武継さんのご登場です。新しい価値観の中でイノベーションに挑むリーダーが考える、「ビジネスとスーツ」の関係についてうかがいました。

コロナ禍を境に、リモートワークの普及などもあり、オフィスに出勤するという概念がなくなり、働く環境や方法が多様化したことで、スーツの必要性にも変化の波が訪れました。

赤塚さん:確かに、自宅で仕事をすることが多いのなら、スーツを着る必要もありませんし、着心地も快適な方がいいはず。働き方に応じて服装が変わるのは当然かもしれませんが、ビジネスシーンでは、やはりTPOをわきまえなければいけません。

担当するお客様に合わせて服装を変えることは、業種を問わずビジネススタイルの基本だと思いますので、依然としてスーツが一定の役割を果たしていることも事実でしょう。むしろ、スーツは今“必要なシーンで選ばれる服”へと、その役割を変化させているように感じています。

なるほど。今やスーツは“毎日着るもの”から“選んで着るもの”へと時流とともにその役割が変化してきた、というわけですね。

赤塚さん:そうかもしれません。これまでスーツといえば、日々の仕事に必要な“制服=ユニフォーム”という認識が強かったと思いますが、最近は、自分も含めて、“スーツ=ファッション”として、より着こなしを楽しみたいという人が増えているように感じます。

スーツを着る頻度が少なくなったからこそ、例えば、素材や縫製によりこだわったクオリティの高い一着を選ぶことで、個性を表現し、気分を盛り上げたり。特別な日をスーツで楽しむために、準備やコーディネートを工夫することも含めて、ファッションとしてより楽しめるようになってきたと思います。

そんな位置づけに移行しつつある今だからこそ、スーツは新たな意味を持ちはじめているのかもしれませんね。

赤塚さん:ですね。いわゆる“画一的なスーツ”であったものから、個人の体型やライフスタイルにまで寄り添った“その人らしいスーツ”、という新たな価値観が生まれたのでしょう。どれも一緒に見えるスーツにも、実は、個々に似合うスタイルがきっとあるはずですからね。それを見つけられると、素敵ですよね。

スーツを楽しむための新しい視点ですね。

赤塚さん:そこで問われるのは、「どこで買うか」よりも、「どのように選ぶか」といった体験価値なのかと思います。自分らしいスーツを見つけるためには、サイズ感やフィッティングが大事ですし、時には着こなしまで含めたアドバイスなども必要になると思います。つまり、“その人らしさ”が最も自然に表れるスーツを求めると、自ずとオーダーに辿り着く、ということだと思います。

なるほど。お客様と直接顔を合わせて、言葉を交わしイメージを共有しながら接客を行う、麻布テーラーの対面接客が非常に有効になるということですね。

赤塚さん:そうですね。服装にはそれなりに気を遣っているはずの広告業界に身を置く我々ですらそう思うわけですから、他業種のビジネスマンたちにとっては尚更、麻布テーラーさんのオーダーサービスには大きなメリットを感じるのではないでしょうか。わざわざ店舗に足を運ぶ意味がきっとあると思います。

ありがとうございます。とはいえ、まだまだスーツをオーダーすることには二の足を踏む方も多いと思いますが。

赤塚さん:その気持ちもわかりますが、麻布テーラーのオーダースーツは、まず価格設定がしっかりしているので、初心者にもわかりやすくて、安心できるところが魅力です。

もし既製スーツを購入しても、袖丈や着丈など、結局はどこかしらお直しする必要があると思います。その分の手間とコストを考えたら、最初からオーダーをしてしまった方が、むしろコスパも良くなるはずですし、スーツの仕上がりも断然、満足できるはずです。

ありがとうございます。そういえば、春先にオーダーしていただいたのが、こちらの一着でした。初夏らしいベージュの色合いがとてもお似合いです。

赤塚さん:着込むほどに味わいが増すコットンスーツは以前から良く愛用していましたが、久々に着てみたくなりまして、夏っぽいベージュで仕立てました。遠目無地に見えますが、実は、ヘリンボーンなんです。

確かに、良く見ると生地の風合いが違いますね。

赤塚さん:シャツも実は、シアサッカー生地でオーダーをしました。今日はオールデンですが、スーツの時はわりと足元にボリューム感のある靴を合わせることが多いので、それに合わせて、シャツなども少し風合いを感じられるものでコーディネートを考えていただきました。

ラウンドカラーの小ぶりな襟元に、ネイビーのニットタイが軽やかで上品に馴染んでいます。ゆったりとしたシルエットも大人の余裕と貫禄を感じさせます。

赤塚さん:世代的に、ファッションといえば“アメトラ”が全盛だった学生時代を過ごしてきましたからね。スーツやジャケパンスタイルも、タイトめなイタリアモードというよりは、少しゆったりとした雰囲気の、アメリカントラッドを意識することが多いのかもしれません。

なるほど。ファッション感やセンスといった価値観的なところは、やはりファッションクライアントを多数お持ちの企業だからこそ、大事になりそうですね。

赤塚さん:そこは結構、大事だと思います(笑)ファッションセンスが似ているということは、共通の趣味や価値観、つまり共通言語が多いということですよね。持ち物や洋服もコミュニティの共通言語として機能することが増えてきましたから。このような共通点は、「この人ともっと話したい」、「ビジネスで関わりたい」など、興味を促すことにもつながります。

ファッションの楽しみ方は、自分がお洒落になりたいという欲望ももちろんあるとは思いますが、それ以上に、その瞬間の共有というコミュニケーションの側面も大きいということですね。

赤塚さん:そうですね。他人と分かり合うための共通言語として、コミュニケーションを深めるためのきっかけにもなるはずです。どんな価値観を持っているかを表明する手段としてスーツを選び、身につけるものを選ぶことが、ますます重要になっていくのではないかと思います。ファッションセンスを磨くことは、ビジネスセンスを向上させることにもつながる部分があるのかもしれませんね。

なるほど。こうしてお話をうかがっていると、何となく赤塚さんらしさがスタイルに現れているような気がしてきました(笑)

赤塚さん:せっかくオーダーでスーツを仕立てるわけですからね。単なるユニフォームになってしまっては、味気ないなと思うんです。やはりこれからのスーツは、“ビジネスウェア”から一歩進んで、“ファッションという個性”を表現することも必要なのだろうと思います。ひょっとすると、スーツは、その人の考え方や流儀、雰囲気のような目に見えない“内面を映し出す鏡”のようなアイテムと言えるのかもしれませんね。

そうかもしれませんね。特に、ザ・ゴールさんはファッションクライアントに特化した広告会社ですからね。

赤塚さん:そうなんです。例えば、就職活動で我々の会社にも面接に来る方々のスーツスタイルには、これからの課題もあるように思いますので、ぜひもっと個性のあるスタイルを提案していって欲しいと思います。

確かに、今や情報源も様々ですし、社会的もある程度許容されている部分もあるわけですから。若い世代のビジネスマンたちこそ、もっとスーツに自分の個性や価値観を自由に反映させてほしいですね。

赤塚さん:そう。今の時代にこそ、一般的なテーラーとは少し趣が異なる、麻布テーラーらしい、正統的なクラシックを軸にしながらも、時流に即したリアリティーのある“ファッションテーラー”としての提案が必要とされるのでしょうね。


赤塚 武継 さん
広告会社を経て、2002年(株)電通入社。多くのファッション、ラグジュアリーブランドの担当を中心に従事。2022年より電通グループのファッションに特化した広告会社(株)ザ・ゴール代表取締役社長執行役員就任。趣味はランニング。

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