シューズとスラックスのベストバランス

シューズとスラックスのベストバランス

靴の名門セレクトショップ、Trading Post(トレーディングポスト)は、現在、麻布テーラー二子玉川店と神戸店において「Trading Post WHITE LABEL(トレーディングポスト ホワイトレーベル)」というショップインショップを展開。麻布テーラーのお客様は靴に対しても強いこだわりをお持ちの方が多いだけに、とても好評をいただいています。 そのトレーディングポストのバイヤーを務める村井久哲さんが、先日、麻布テーラーで春夏用のスラックスを4本オーダー。それぞれどんなコーディネートと合わせる想定なのか? はたまた今らしいシューズとスラックスのバランスは? せっかくの機会だからと、二子玉川店店長の越智諒がじっくりヒアリングいたしました。

トレーディングポストと麻布テーラー

越智諒(以下、越智):先日はご来店ありがとうございました。あのとき村井さんがオーダーされたパンツ、すべて仕上がりました。

 

村井久哲さん(以下、村井) いろいろとこだわって作りましたので、穿くのが楽しみです。

 

越智:村井さんは昔から麻布テーラーでよくオーダーをされていたようですね。

 

村井そうなんです。若い頃は今よりかなり痩せていて既製スーツが全然合わなかったんです。銀座店に勤めていた時、近くに麻布テーラーがあることを知り、スーツやシャツを頻繁に作らせていただきました。最近はちょっとご無沙汰していましたが、久々にスラックスを作りたくなりまして……。

 

越智:銀座をはじめ、麻布テーラーとトレーディングポストさんは比較的近いところに店舗を構えているケースが多いんですよね。だから昔からスタッフ同士の交流があり、プライベートでお互いのお店を利用することも多い。

 

村井スタッフもそうですが、お客様もけっこうかぶっていますよね。私自身、麻布テーラーさんで仕立てたばかりのスーツを持って来店されるお客様を何度も接客したことがあります。

 

越智:トレーディングポストさんのコンセプトは「進化するクラシック」。これは麻布テーラーの世界観とも通じるところで、相性がいいんでしょうね。2019年に麻布テーラーの二子玉川店で「トレーディングポスト ホワイトレーベル」というショップインショップをスタートさせたのも、そうした親和性の高さが背景にあったからだと聞いています。

 

村井お互いのお客様へのサービスの一環ですね。

 

越智:ホワイトレーベルはトレーディングポストのセカンドラインという位置付けでしたよね。

 

村井はい。トレーディングポストのオリジナルをメインに、比較的お手頃な価格帯のシューズを厳選して紹介しています。

 

越智:いまは二子玉川店と神戸店で展開していますが、どちらもお客様にとても好評ですよ。

 

村井ありがとうございます。とくに最近は撥水性能を持たせたシューズの調子がいいようですね。

 

越智:そうなんです。デザインでいうと、ストレートチップなど正統的なドレスシューズの売れ行きがやはり一番いいのですが、ファッションのカジュアル化に伴い、ローファーなどのスリッポンを求められる方も増えてきました。

 

村井私どもの直営店も、とくに夏場はスリッポンタイプの売れ行きがいいですね。近頃はスニーカー通勤される方も随分増えましたが、ある程度カチッとした装いでないといけない職種の方もいらっしゃいますから。そうした方はスラックスに革靴を合わせる。その場合、ローファーを選ばれる方はとても増えています。

 

夏場のコーデは下半身勝負

 

 

越智:今回村井さんは当店でスラックスを一気に4本もオーダーしていただきました。ありがとうございます。

 

村井最近の日本の夏は暑さが尋常じゃなく、上着を脱いで過ごすことも多くなりますよね。そうなるとコーディネートの主役は、面積的にも必然的にスラックスとなる。ですから今らしいシルエットやディテールを備えたスラックスが欲しいなと。

 

越智:そういうお客様は多くて、春夏はスラックス単体のオーダーがとても増えます。村井さんの場合、お履きになるシューズとのバランスを考慮してオーダーされていたのが印象的でした。

 

村井そこは靴屋ですからね(笑)。さきほど夏場はスラックスがコーデの主役と言いましたが、訂正します。シューズを含めた下半身が主役(笑)。

 

越智:本日はその作成したスラックスごと、実際にどのようなシューズと服を合わせるのか、村井さんならではのコーディネートを披露していただけないかという無茶なお願いをさせていただきました。

 

村井靴と服を持ってくるのが大変でした(笑)。でもこういうのを考えるのって楽しいですよね。

 

越智:村井さんのコーディネートから、シューズとスラックスの今らしいバランスについて改めて学ぶことができたらと思っています。

 

村井なんだか緊張しますね(笑)。

 

村井さん流シューズとスラックスのコーディネート

 

越智:1本目はグレー無地のスラックスです。穿き心地はいかがですか?

 

村井生地は平織り素材としたことで、めちゃめちゃ涼しいですね。スースー風が通ってくる感じです。

 

越智:涼しい穿き心地は、オプションでエアコンフォートと呼ばれる清涼仕立てを選択されたのも効いているんだと思います。この仕立てだとポケットの袋地や膝あてなどがメッシュキュプラとなり、熱がこもらず、通気性もさらに上がるんです。もちろん汗によるベタつきも軽減。ちなみにポケット裏地にキュプラのメッシュ素材を採用するのは業界初の試みです。

 

村井肌触りがとても心地よくて、盛夏に高頻度で穿いてしまいそうですね。

 

越智:デザインやシルエットはいかがでしょう。

 

村井今らしいクラシックなスラックスが1本欲しかったので、このモデルではハイウエスト気味のベルトレスのデザインとし、腰回りにはインプリーツを2本入れました。広めのワタリからストンとストレート気味に落ちるシルエットといい、とても大人っぽいムードに仕上がっていますね。このスラックスはローファーではなく、正統派のレースアップシューズを合わせる前提で作ったのでとても満足しています。

 

越智:村井さんのオーダーで、裾は靴の上でハーフクッションするぐらいの丈感としました。裾幅が22㎝ぐらいあるので、もう少し長めの裾丈としても似合ったと思いますが。

 

村井たしかにこういう太めのシルエットのスラックスはワンクッションもバランスよく決まると思いますが、私は職業柄、履いてる靴をしっかり見せたくて(笑)。

 

越智:合わせたパンチドキャップトウは、日本の老舗シューメーカー、ユニオンロイヤルさんが製造を手がけたトレーディングポストのオリジナルシューズですね。

 

村井アッパーに撥水レザー、アウトソールには滑りにくいダイナイトソールを用いた全天候型シューズです。

 

越智:当店で定番人気のモデルです。丸みとスマートさがバランスしたラウンドトウラストも好評です。

 

村井私もこの靴をとても気に入っています。細身のスラックスはもちろん、いま穿いているややワイドなシルエットまで、あらゆるスラックスのスタイルにマッチしますから。あと、パンチドキャップトウというところもいいんですよね。雑誌などでは黒のストレートチップこそビジネス靴の王道と紹介されていますが、あれはどちらかといえばフォーマルな靴で、普段のビジネスで履くなら、パンチドキャップトウのほうが絶対使いやすいと考えています。

 

越智:同感です。穴飾りがある分、ちょっとカジュアルというか、抜け感が生じるんですよね。かといってウィングチップのように全面に穴飾りがあるモデルだと足元が派手になり過ぎてしまいますから。

 

村井本当にオールマイティなドレスシューズはパンチドキャップトウ。中でもこういう全天候型モデルを選べば、仕事使いの靴として最強だと思いますよ。

 

 

越智:2本目はグレンチェック柄の入ったスラックス。こちらも先ほどのモデルと同様、ややゆったりしたシルエットですね。ベルトレスで2インプリーツであるところも同様。生地はウォッシャブル対応のコットン×ポリエステルを選ばれました。

 

村井この品あるルックスで自宅洗濯できるなんて素晴らしいですね。

 

越智:センタークリース部分は、裏側から特殊な樹脂を流し込んで固めていますので、洗濯後にアイロンかける必要もありませんよ。

 

村井そこもありがたい。夏場の暑い時期のアイロンがけは大変ですから。

 

越智:このコーデではタッセルローファーを合わせたんですね。

 

村井ノータイのややくつろいだジャケットスタイルなので、こういうローファータイプの靴が合うのかなと。タッセルローファーにしたのは、房飾りのアクセントが、スラックスのグレンチェック柄の小粋さとマッチするんじゃないかと思いまして。

 

越智:とてもお似合いです。綺麗なお色目のジャケットを着ていることもあって、ちょっとフレンチっぽいコーデとなっていますね、ちなみにこの靴はトレーディングポストさんがオリエンタルに別注したフィリップというモデルですね。

 

村井一見エレガントですが、じつはドレスにもカジュアルにも使えるバランスの良い木型を採用しています。アッパーにインポートのボックスカーフを使っているのもポイントで、足元を品よくまとめてくれます。

 

越智:パンツのクラシックな雰囲気ともよくなじんでいます。

 

村井じつは以前からウォッシャブル性能のあるスラックスに興味があったのですが、既製品だと、万人ウケを狙うのか、ノープリーツの無難なデザインのものばかり。オーダーであれば、こういうクラシックなデザインのものも作れるからいいですよね。

 

越智:麻布テーラーでは昨年からウォッシャブル対応のオーダースラックスを展開し、おかげさまで大好評を博しているのですが、村井さんのようにクラシックなデザインで仕立てられる人はまだまだ多くはないんです。おそらくウォッシャブルを選ぶ方は、実用性重視の方が多いからでしょう。でもせっかくのオーダーなのですから、デザインやシルエットにもとことんこだわっていただけたらなと思います。生地もいろんなタイプをご用意していますから。

 

 

越智:3本目のスラックスは、ジャージー素材のものです。

 

村井店頭で接客する時は、立ったりしゃがんだりすることが多いので、1本はジャージーで作りたかったんです。グイーンと生地が伸びるので本当に楽チンです。

 

越智:腰回りはワンプリーツを入れてクラシック感を補填しつつ、じつはウエストにはシャーリングを仕込んでイージーパンツ的な仕様に。

 

村井ドローコードがないので、大人顔でスッキリしてますね。ベルトをしても邪魔にならない。

 

越智:シルエットは細身のテーパード。そして裾はシングル。裾幅はたしか19㎝でした。くるぶしが少し覗く、やや短めの丈感で裾上げさせていただきました。夏場のスラックスは、ちょっとゆとりを持たせたシルエットで涼しく穿きたいという方もいらっしゃいますが、逆に、夏だからこそすっきり穿きたいという方も多い。その場合、こういう丈感とするのは正解だと思います。

 

村井ローファーの素足ばきも決まりますからね。

 

越智:お履きになっているのはダークブラウンのスエードローファーは、トレーディングポストのオリジナル。これも最初に紹介したパンチドキャップトウ同様の全天候型モデルで、アッパーにイタリア製の撥水スエードを使用したものですね。

 

村井このモデルはコンフォートな履き心地も自慢。裏地なしのアンラインド仕立てのために心地よく足にフィットし、ソールにはエクストラライトという軽量で柔らかなラバーを使用。フルソックの中敷の下にはスポーツブランドでも使用する高性能なスポンジも仕込んでいます。

 

越智:じつはこの靴、ボクも愛用しているんです。丸みを帯びたトラッドな木型も魅力で、いろんなスタイルと合わせやすいんですよね。 村井 程よくボリューム感がありますから、こういうスッキリしたシルエットのスラックスの足元にちょうどいいメリハリつけてくれます。価格も手頃に抑えていますので、ドレスカジュアルの引き締め役にぜひ活用していただきたいと思います。

 

越智:そして最後の1本はインディゴデニム調のシャンブレー生地を用いて作成したスラックスです。

 

村井いわゆるデニスラというやつですね。店頭に立つ時は基本ジャケパンスタイルなのですが、トレーディングポスト渋谷店のようにカジュアルな靴を揃えるお店に行く時は、装いも若干カジュアルにしますので、こういうスラックスが1本あると重宝するかなと思いまして。

 

越智:お召しのチェックのシャツジャケットとも相性バッチリですね。きれい目カジュアルのお手本といった雰囲気。ちなみにこのスラックスに使用した生地は、細番手のコットンと、接触冷感性やストレッチ性、形態安定性にすぐれたマイクロファイバーを交織しています。

 

村井接触冷感をうたうだけに、たしかにヒンヤリしたタッチ。生地表面にほんのりと光沢があるのも気に入りました。

 

越智:シルエットは、先ほどのジャージー素材のスラックスと同じような細身のテーパードで、裾もシングルで仕上げられました。軽快感あるので白のスニーカーがとてもよくマッチしています。

 

村井この靴はイタリアの高級シューブランド、エリア・マウリッツィ製。トレーディングポストでは10年ほど前にここのドレスシューズを扱っていたのですが、最近はスニーカーの出来が素晴らしく、久々に仕入れてみたんです。

 

越智:ジャーマントレーナー的なデザインがいいですね。スラックスにはやはりこういうクラシックなデザインのスニーカーが似合う。

 

村井上質なレザーを使用し、ソールも天然ラバーソールを使用していますので、少々お値段は高いのですが、とても上品な雰囲気。履き心地も最高ですから、スラックスに合わせるスニーカーとして注目していただきたいです。

 

越智:今回村井さんのコーディネートを拝見して、改めて麻布テーラーのスラックスとトレーディングポストの靴は相性いいんだなと確信いたしました。

 

村井麻布テーラーで服を作られたお客様は、その足で当社の店舗に訪れてもらいたいですね。その仕立てた服にどんな靴が合うのか、じっくり案内させていただきます。二子玉川店と神戸店の場合は当店のショップインショップがありますので、そちらでの案内は麻布テーラーのスタッフの皆さんにお任せしますが。

 

越智:承知しました。うちは靴好きのスタッフが多いので任せてください。本日はどうもありがとうございました。

 

 

 


 

村井久哲さんプロフィール

学生時代のバイトをきっかけに革靴の魅力にはまり、革靴やそのドレスコードなどを独学で研究。その後、靴の販売会社を経て、2003年にトレーディングポストの販売員として入社。青山店店長などを歴任後、現在はトレーディングポストを運営する株式会社プレステージシューズ社のリテール部に所属し、靴のバイイングを担当。毎日のスタイリングはいつも靴から組み立てるそうで、過去には一ヶ月にわたり、毎日違う靴とスタイリングで店頭に立ったこともある。趣味は音楽鑑賞。

 

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