オーダー店の概念を変える独自の
"身の丈"主義
麻布テーラーの急成長の裏にはさまざまな理由があれど、勝井照夫という人の存在なしでは語ることはできません。事業立ち上げから間もなくして麻布テーラーの中核として、接客、店舗設計やレイアウト、店舗内の人員配置、そして、麻布テーラーならではのセンス、カッコよさ、これをほぼほぼ一から作り上げました。当時、彼と共に麻布テーラーを支えた吉田、弟子的存在である藤田、そして実子であり、今では神戸店の店長を務める勝井大輝の3人が集まりました。まず、話に上ったのは徹底した身の丈主義という言葉。
吉田 勝井さんは常々、身の丈に合った商売を、とおっしゃられていました。これは、装いにおいてもそうです。自らの枠の中に収まるというわけではなく、むしろ制約があるなかで、どれだけのことができるか、知恵を絞ったり、自ら手足を動かし、手間を惜しまないということです。そうすることで、思いもよらなかった新しいものが生まれていきます。
勝井 父はお店の居心地の良さを非常に重視していたと思っています。人が一番落ち着けるところって、実家ですよね。実家のような居心地の良さを目指す、というのはよく話していた記憶があります
藤田 例えば新店舗を出すとなったら通常であれば不動産屋が主体となって動く。しかし、勝井さんは自分で出店地域を歩いて空室を探し、気に入ったところがあれば一軒ずつ自ら電話して物件を決めていました。なかなかできないことですが、店作りに愛情を注いでいたからこその行動だと思います。

POINT
父が着ていたスキッパーポロシャツを持参した勝井。今でもたまに着ているという。時代を経ても通用する普遍性を持ったアイテム、仕組みを多く作り上げた。