今シーズンに私がオーダーしたスーツ♯1

今シーズンに私がオーダーしたスーツ♯1

洋服は身に着ける道具であり、身体保護などの根本的な機能はもちろん、着飾ることによって得られる心理的な満足感や他者に対する印象を作り出すという、他の道具とは異なった機能を持ち合わせています。

 

麻布テーラーがメインに扱っているスーツもしかり。麻布テーラーのお客様とお話をすると、一様に麻布のスーツを着ると背筋が伸びて出勤するときに気分が上がると聞きます。そして、スーツで印象度を上げてビジネスへの成功へと結びつけているように感じます。

 

私が麻布テーラーのクリエーティブディレクターとして大事に思っているのは、ビジネスウェアこそ「着飾ることによって得られる心理的な満足感や他者に対する印象を作り出すべき」であるということです。単なる欧米のトレンドを模倣するような表面的なお洒落ではなく、精神的なお洒落を楽しんでいただけるようなブランドを目指しています。

 

ビジネスウェアと一言で言っても、人それぞれビジネスライフスタイルは違います。職業や職種が違うだけでもフィットするウェアが変わりますし、体型の違いによってもフィットするウェアは変わります。よって、既製品ではその対応には限界があるのです。

 

前置きが長くなりましたが、今シーズン私がオーダーしたスーツが本日のお題です。私もスーツを作る時に考えるのは、皆様と同じく「どんなシーンで着用したいのか?」「そのスーツを着用して他者にどう見られたいのか?」からスタートします。店舗ではそれをテーラリングスタッフに伝えると、予算を聞かれて約3,000種類ある生地からいくつかに絞り込んで提案してくれますが、私の場合は当然1人で完結する訳です(笑)。

 

自問自答のその答えは?私の場合はかなり特殊な職種です。スーツを日常のビジネスウェアとしてだけではなく、非日常のパーティウェアや海外エキシビションなどのトラベルウェア、メディア露出などの衣装的な要素も含まれます。その結果「トレンドが反映されている華やかさが必用。」「シワにも強く仕立て映えがする機能要素が必用。」「様々なシーンで着用できる汎用性が必用。」という3つの答えが出ました。

 

その答えの生地はこれです。

LASSIERE MILLS(ラッシャーミルズ)クラシックモヘア61204

 

出来上がりはこれです。

まわりからは上月がブラウンのスーツ着るのは珍しいな!と驚かれたぐらい、近年は意識的にトレンドばかりを意識したスーツを作りませんでした。特殊な職種が麻痺して、皆様のビジネススタイルとかけ離れたご提案をしたくないので、基本のネイビーとグレーを守っていた訳です。

 

ちなみに、トレンドといえばリアルクロージングを提案するピッティウオモ。2018年春夏シーズンは、砂漠の乾いた空気を背景にしたサファリスタイルに代表する「コロニアル」ムードと英国伝統的のテーラリングの要素を組み合わせた「コロニアル テーラード」が、ピッティウオモで浮上した新トレンドです。

「コロニアルスタイル」とは、1920年から1930年代、欧米列強の貴族が、アジアやアフリカなどの植民地で過ごしたバカンスを思い描いたスタイルのこと。貴族が愛した上品なテイストを守りながら、現代的にアップデートするスタイル。我々がメインに扱うビジネスウェアと相反する流れを、フィーリングとして取り入れるような様々なアイディアが重要になると思います。それを自分のスーツで具現化してみました。

 

さぁ、今晩はパークハイアット東京であるパーティに出席させていただくことになっています。フォーマル色と相反するブラウンを色数と柄数を絞るとことで、フォーマル気分に昇華させました。次回ブログは、このスーツを着たパーティの模様と共に、生地にクローズアップしたいと思います。

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