礼服。喪服。ブラックスーツ。
店頭では続々と秋冬シーズンの生地が入荷してきました。外は猛暑でも、この時期になると秋冬用にどんなスーツを作るか考えてしまうのがスーツ屋のさがです。定期的に整理もしていますが、この調子なので、クローゼットの中身も把握しきれていない量にすぐになってしまいます(汗)。そのため、シーズン毎の衣替え前に早めにクローゼットをチェックします。
近藤麻理恵さんの人気著書「人生がときめく片付けの魔法」には、すべて1つ1つさわって、ときめいたら残す、と書かれています。「ときめくか、ときめかないか」の上月版をしています。ただ、洋服屋なので、ときめかなくても、ライフシーンで必要なワードローブは残します。その代表格がブラックスーツ、日本でいう礼服や喪服になります。 昨今、モード的スーツとしてのブラックスーツは若い世代を中心に定番化してきましたが、これは日本独自の流れでした。イタリアからサプライヤーが来日すると、あまりに黒いスーツを着たビジネスマンが多いことに驚いていたことを思い出します。私は欧米の影響を強く受けてしまっているので、ブラックスーツを結婚式では着ません。ただ、葬儀はやはりブラックスーツでなくてはならないので、これだけはシーズン毎にサイズチェックをするようにしています。年齢を重ねると、お通夜や葬儀に参列する機会も多くなるので、礼節を重んじた準備をするのも重要だと思っています。
ちょうど、昨年作り替えたばかりだったので、サイズは問題ありませんでした。私の作ったブラックスーツはこんな感じです。
■ジャケットはクラシコイタリアモデル
シングルの2つボタン、腰はフラップポケット、サイドベンツにしています。本来のフォーマルのルールからいうと、フラップ無しの両玉縁でノーベントになるのは理解しています。略礼服なので、時代性に合わせて機能も考慮して判断しました。またディテールで遊ぶ必要がないので、装飾的なポケット脇Dカンや袖口本開きにもしていません。ボタンはより黒に見えることからナット釦にあえてしています。裏地はもちろん黒です。
■パンツは2プリ―ツのベルトレス
着用機会も少なく、シーズンをまたいで着用するので、ウエストサイズも少しゆとりをもたせた2プリーツにしています。シルエットもテーパードをゆるくストレート気味に変更しました。フォーマルディテールのベルトレスにしていますが、華美なサイドアジャスターは外しました。裾上げはあえてダブルで仕上げています。本来のフォーマルのルールからいうと、シングルやモーニングカットだとは理解していますが、略礼服なので、実用性も考慮して判断しました。
服そのものが次第に合理化で簡潔なものやカジュアルに変わってきた一方で、簡略化の対極であるフォーマルウェアは消えることはありませんでした。しかし、日本だけではなく、世界基準のフォーマルウェアの着こなしも変わってきています。それを理解した上で、お客様のパーソナリティも反映するのが、“AZABU BLACKS”という麻布テーラーのフォーマルです。 麻布テーラーは、最新のフォーマルスタイルだけではなく、私がつくったお通夜や葬儀に参列するブラックスーツに関しても、店舗スタッフは全てアドバイスが出来るようになっております。また、全店舗に日本フォーマル協会のフォーマルスペシャリスト検定の資格を持ったスタッフが在籍しております。装いに関するルールを知る資格を有しているからこそ、時代とともに変化する社会的慣習や礼儀を、お客様の個性に程よくマッチングさせるご提案もさせていただきます。私も、日本フォーマルスペシャリスト検定1級(ゴールドライセンス)を取得しています。意外だと思いますが。。。