上月のきづき#夏の新企画
「最近、“重いですね”より、“軽いですね”の方が褒め言葉になってきた気がします。」私がスーツ業界の入った時代は、ブリテッシュスーツの全盛期だったこともあり、“重厚感”が価値でした。構築的な肩、張りのある芯地によるイングリッシュドレープ、ヘビーウェイトな生地。しかし、今、世界のテーラードは少し価値観が変わってきています。
先日、2027春夏の企画をスタートするにあたり、2026春夏のピッティウオモの流れを整理していて、改めて感じたことがあります。それは、“軽さ”が、単なる機能ではなく、ラグジュアリーそのものになってきているということ。少し前までの「快適」は、“楽(コンフォート)”が中心でした。ストレッチが効いている、動きやすい、疲れにくい。もちろんそれも大切です。でも今、世界のラグジュアリーブランドが向かっているのは、そのさらに先。“軽(ライトネス)”です。
誰もが知る某フランスブランドのプレタポルテも手がけるファクトリーブランドでは、200〜220gという超軽量な上質天然素材を用いながら、驚くほど美しいテーラードを作っていました。ただ軽いだけではない。軽さそのものが贅沢。これが、今のラグジュアリーの新しい価値観だと感じました。
実際、今回のピッティでも印象的だったのは、“頑張って着ている感”のないジャケット姿。軽やか。自然体。でも、きちんと品がある。プロ中のプロの来場者スタイルも、シャツのように羽織れるのに、ちゃんとテーラードとして成立していました。
この空気感を、麻布テーラーとしてどう解釈するか。そこから始まったのが、「AZABU AIR JACKET」でした。ただ、軽量ジャケット自体は、世の中にすでにたくさんあります。でも、軽さを優先しすぎると、どこか頼りなく見えてしまうこともある。テーラードとしての立体感や色気まで、薄くなってしまうこともある。だから今回、目指したのは、“軽く見せずに、軽くする”ということでした。

特殊プレスによる立体的な上衿。自然に返るラペルロール。柔らかく構築した肩まわり。構造をただ省くのではなく、“テーラーとして美しく見える最低限”を残しながら、約300gの軽量化を実現しています。300gというと、小型ペットボトル1本分くらい。数字で見ると控えめですが、実際に羽織るとかなり違います。店頭で試着した皆さんは恐らくこう言います。「軽っ。」でも、面白いのはその次です。鏡を見ると、ちゃんとジャケット姿として成立している。むしろ、今っぽい。これが今回のAZABU AIR JACKETで、一番大事にした部分でした。

また、AZABU AIR JACKETは“半袖の上に羽織る”ことまで想定して設計しています。袖裏を上腕のみに限定することで、通気性とスムーズな袖通しを実現。半袖やニットの上から羽織ってももたつかず、軽やかな着心地が続きます。個人的には、このジャケットをオーダーする際、袖丈を通常より5mmほど長めに設定するのもおすすめです。長袖ドレスシャツの場合は、袖口から5㎜から1㎝ほど出すのがセオリーですが、半袖の場合は袖が見えなくなる分、短く見える傾向にあります。こうした細かな調整ができるのも、オーダーならではの面白さだと思っています。

つまり結論としては…「シャツ感覚で着られるのに、シャツでは行けない場所へ行ける服。」それが、AZABU AIR JACKETなのかもしれません。
最後に、話は少し変わりますが、5月14日に54歳になりました。その日は偶然にも、西エリアの店長研修会。一次会の終わりに、「今日は誕生日なので、急いで家族のところに帰らないと」と何気なく話していたのですが…すると、「えっ、今日誕生日なんですか!?」「それなら帰したらダメでしょう」「じゃあ、これから誕生日会します!」という流れで、急遽二次会へ。“その場感”が逆に嬉しかったですね(笑)




