村井の犬の耳~悦に入るならエスキースをともに~

村井の犬の耳~悦に入るならエスキースをともに~

 麻布テーラー心斎橋店のブログをご覧の皆さま、初めまして。
4月に入社し、5月より心斎橋店への配属となりました村井(23)と申します!

私の趣味の一つでもある読書を交え、洋服について書くだけでなく、読んだ本(実際は読んでないけど、読んだ風に騙り語れる本)に関する内容、知識等を少し織り交ぜながら、お届けできたらと思いますので、よろしくお願いいたします。

※「犬の耳」とは⇒本の気になった、気に入ったページの角を折った際にできる三角形のこと。犬の耳に見えることから「ドッグイヤー」と一般的に呼ばれる。

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 突然本編へ突入するのですが、「エスキース」という言葉はご存じでしょうか。
絵画、建築関係の方は耳馴染みのある単語かもしれません。

この「エスキース」を題材とした小説を読んでいた時にふと頭に浮かんだことがありました。

「麻布テーラーでお客様と共に会話を重ねて完成させるオーダーシートはエスキースなのではないか」と。

オーダーシートとはスーツのデザインや寸法等の指示を記入して工場へ送る紙なのですが、今の私にはこれがエスキースに思えてなりません。

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 先日ちょうど自分用のスーツが出来上がりました。スーツは入社してから2着目です。

生地はHarrisons of Edinburgh(ハリソンズオブエジンバラ)のフロンティア(シングルスーツ¥110,000~(税込))から。イギリスならではのハリコシのあるしっかりしている生地で仕立て映え抜群です!
大柄のチェックなのですが、生地のベース色と同系色のチェックなのでしっかり馴染んでくれます。

裏地、ネーム刺繍は私の心のフットボールクラブ、ロンドンに拠点を置くアーセナルのチームカラーを意識して赤系統の色にしました。昨季は惜しくも2位だったので今季はぜひ優勝してもらいたいです。

今ならハリソンズ160周年限定の生地マークがついてきます。

 

クラシックなブリティッシュテイストの世界観が好きで、1着目もそういった雰囲気を意識してオーダーしました。着る度着る度にテンションの上がるスーツ。かなり満足のいく出来でした。

ですがどうやら聞くところによるともっとクラシックな方向にこだわりを突き詰められるとのこと…

なんと。

そんな情報を耳にした私は2着目のスーツを作る際、先輩スタッフのお客様のように細かくこだわれる部分をいくつか教えていただきました。

それにより、自分の理想の完成形となるエスキースをより具体化することができたのです。

今までも頭の中にフワッとしたイメージ、雰囲気はあれど、自分一人では明確に言語化できずに留まっていたものでした。それらが実現した理由はひとえに先輩スタッフと会話を重ね、多くの情報を共有し、共にエスキースを描けたからこそです。

そんなこだわり部分を一通り↓↓↓

まずは全体的なシルエットから。

ボタン位置が高めのハウスモデル「クラシコイタリア」でさらに衿巾を広げ、裾の角度を通常より少し直角に近づけることによってブリティッシュ感を演出しています。
着丈もお尻が完全に隠れるくらい長めでクラシックに。

次はボタンとポケット。

標準でお選びいただける樹脂ボタン、オプションでお選びいただける水牛ボタンなどが一般的によく見られるものになるかと思いますが、くるみボタンをチョイス。
これだけでもクラシック感がかなり増幅されたイメージに。

今現在放送されているNHKの朝ドラ『らんまん』で神木くんが着用されているスーツにもくるみボタンが使われていたりします。
明治時代を舞台にした作品なので戦後のアメリカの影響がなく、直接ヨーロッパから洋服の文化が入っていた時代のスーツで、毎話見る度にかっこいいなと感じます。

ポケットが2つ付いているのはチェンジポケットと言い、ブリティッシュスーツによく見られるディテールです。先述したとおり着丈を長めに設定してあるので、その間に生まれる空間を埋めてくれる効果もあります。

最後にスラックス。

内側に折られた2タックでゆったりめに履いており、ベストからスラックスまでの流れが一番綺麗に見えるベルトレスなので、座っている時間が長くても快適に1日を過ごすことができます。

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これで今回オーダーしたスーツの紹介は以上になります。

2回目のオーダーで自分好みのスタイルにかなり近づけたこともあり、しばらくはデザインの変更はほぼ無しで作り続けるかもしれません(笑)

2000年代前半から長く続いたスキニーパンツの流行の影響による細身のスーツがコロナ禍を機に徐々にゆったりめに変遷してきている今、少しゆとりのあるサイズ感でクラシック回帰してみてはいかがでしょうか?

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ちなみに「エスキース」とはフランス語で「下絵」を表す言葉です。

工場で本番の絵を描く際に重要になってくるものは、お店でお客様と共に描く下絵になります。
ぜひ素敵な情景を思い浮かべ、共に筆を走らせに麻布テーラー心斎橋店へお越しくださいませ。
そうすればきっと、あなたも今回の私のように悦に入ることができるでしょう。

 

~悦に入るならエスキースをともに~

 

村井

 

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今回のネタのタネ

『赤と青とエスキース』 作:青山美智子 PHP研究所

一枚の絵画の周りで時を経ながら紡がれる、五つの愛の物語。
どれも違った形の愛なのですが、どの愛にも共通項があり、とても心温まる作品です。
2022年本屋大賞2位の作品で文体も柔らかく、爽やかな読後感の短編集なので、読書初心者の方にもオススメの一冊となっています。


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