Tartan
1746 Battle of Culloden [カロデンの戦い]
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イギリス名誉革命後のジャコバイト運動。その最後の鎮圧となる戦いを描いています。
左側がスコットランド系のステュアート王朝ジェームス二世の復位を支持するジャコバイト軍。
右側がプロテスタントからなる議会派、すなわち革命を起こした体制側であるブリトン軍です。
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お察しの良い方はお気づきであろうと思いますが
ここでスコットランド人で編成されるジャコバイト軍が身に付けているのがキルトそしてタータンです。
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ちなみに、キルトは[Kilt]でありパッチワークの[Quilt]とは異なります。
ボックスプリーツ(=箱襞)に畳まれたキルト
約7メートルからなる生地。柄合わせを寸分違わず仕上げるには3~5年の修行を要すると言います。
ちなみにこのキルト着用時、下着は用いないというのが定説です。
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このジャコバイト運動鎮圧後、反乱を重く見た政府によって氏族(クラン)制度は解体されます。
その中心がハイランダー(=北部高地に住む屈強な氏族。資源が乏しい土地ゆえにその傭兵としての戦闘力こそが資源。)
であり各氏族ごとの強固な結束が何者にも勝る脅威であったためです。
それは文化面ではキルト・タータンの剥奪を意味し、ここに多くのタータンの継承が断絶し失われることになります。
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語りだすとイングランド・スコットランドにフランスも巻き込んだ暗く陰惨な歴史に突入しますので
趣向を変えてそんなタータンに魅せられスコットランドまでお勉強しに行ったときのことを少々。
ちなみにプライヴェートの一人旅です。
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エディンバラ城下の広場で何やら 皆さんお集まりのようです。
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キルト姿の男性が。
履いているのか? 履いていないのか? That is the question.
バグパイプバンドのメロディに乗せてスコティッシュダンスの練習に励んでいらっしゃるところです。
かつては禁止さていれたキルトもバグパイプも今では市民の日常に戻っています。
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現地でアポを取ってタータンの製造工場に向かいます。
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バスの運転手さんが言うには「1時間チョイで目的地に着くから着いたら教えたるわ」とのこと。
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バスから見える羊ちゃんたち。
ブラックフェイス種やチェビオット種がいてますねー。
ちなみに羊は「メェ~」ではなく「ンヘェェ~」と鳴きます。羊がそう言っていたので間違いありません。
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1時間くらいして「まだですか?」と運転手さんに聞いたら「あとちょっとや」とのこと。
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その15分後・・・
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Really!! マジで!!
忘れられた東洋人が一人ぽつねんと反対方向行きのバスを待つことに。
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そんなこんなで到着!
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「おう!ゆっくり見ていってくんな!」的ノリで案内していただけました。
いや~ほっと一安心です。お邪魔します!
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工場で織られるタータンの生地見本。
機に掛けられたままなので標本といった体です。
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ナンクロ?確かに英国で流行っているらしいですけど。
いえいえ、経糸緯糸の柄出し指示書ですね。
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「Black Watch」世界で最も有名なタータン。
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キャンベル氏族を筆頭とするハイランダーによって編成された監視兵中隊「第42ハイランド連隊」のタータンです。
ブラックウォッチとはその愛称であり後の正式名称なのです。
ブラックは見た目の色から。ウォッチは時計ではなく監視するの意味から採られています。
この連隊は鎮圧されたジャコバイト軍ではなく、その戦力を買われて体制派のブリトン軍に与した連隊です。
そのためにブラックウォッチは例外的にタータン剥奪の危機を免れることとなります。
19世紀中頃から氏族のタータン復興が盛んになるのですが、このときに生まれたタータンには
前時代から存続するブラックウォッチを参考にしたものが多く、そのことがブラックウォッチの知名度を高めているといえます。
ちなみにこのブラックウォッチ(連隊の方ですが)、統合を繰り返しながらも存続していて朝鮮戦争にも参加しています。
現在はアフガニスタンに駐留して軍事行動に参加しているはずです。
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さてさて。
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生地の検品をなさっています。糸抜けなどをチェックする工程です。
こちらの作業室は静かでお話もゆっくり出来ました。
織機が稼動しているフロアでは耳栓必須でしたので。
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こちらの工場はラルフ ローレンやルイ ヴィトンのオリジナルタータンも手掛けています。
タータンは紋章と同じく厳密に管理されており、新たに作るには登録機関の認可が必要となります。
言い換えれば認可さえ下りれば誰でもオリジナルタータンが作れるということです。
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上:ツィードにタータン
中:フォーマルにタータン
下:これなら着られそうなタータン
この後もう一度1人で初めから回りなおして工場の皆さんに心からの感謝の意を伝え見学を終えました。
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そして。帰りのバスがなかなか来ないので・・・
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ヒッチハイク。
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この方のお名前は私、一生忘れません。
生粋のスコティッシュであるらしいMr.の訛りのキツイ英語に苦労しながらも一生懸命に話します(主に彼が)。
中でも感動したのがある小さな橋を渡ったとき。
彼が教えてくれたその川の名前は
「The River Tweed」
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感無量でした。
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エディンバラ市内まで送っていただきお別れのときにはお互いほろりときてしまいました。
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エディンバラ城から見渡す新市街。
新市街から見上げるエディンバラ城。
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次はツィードを訪ねる旅に来よう。
きっと来よう。
その思いは今も胸に温めています。
野間 剛