Re : ベストなヴェスト – Which is the Best Vest ? –
※本日はこの時の記事に今の私なりの知見も含めて加筆したものです
本来、ベストはあって当然、それを着てこその「スーツ」であったものが大戦下の物資統制の影響で「ベストは省略可」とされたことがきっかけで現代の2ピーススタイルに落ち着いたみたいです。
「無きゃ無いでいっか。」ってなったんでしょうね。
昨今ではネクタイがその位置付けで、この1年は特にスーツそのものですら「ビジネスウェア」として捉えなくなったお客様も少なくありません。
「普段は着ないけど重要な時は…」なんてほぼ毎週末にはどのスタッフも耳にしているのでは。
それでも(普段は着なくても)、スーツが持つ公的な優位性(礼儀とも言えますかね)やそのルックスの単純明快なカッコよさは「使用頻度は高くなくても良い買い物にしたい」と思わせる憧れや魅力がありますよね。
初オーダーがきっかけで使用頻度が高くなってしまう方も少なくない魔力もあります。
「試着室でその人の顔が思い浮かんだら何とやら」、みたいなコピーも流行りましたが、こんなに流行り廃りなく女子ウケする代物も無いんじゃないですかね。
…、他にありますか?
髪型のこと詳しくありませんが、私がハタチ前後の頃は「ゆるふわ無造作ヘア」全盛期だったのに今の子なんてこぞって韓国系センターパートかバーバーカットじゃないですか。
「坊ちゃん刈り」とか「刈り上げクン」とか「コボちゃんカット」とか呼ばれて心の底からあり得ない髪型だったのに…。by 昭和ラストの1988年生まれ
でもスーツに関しては、ほぼ業界内のみで終始してしまう細かい専門的なトレンドはあるにせよ、パーソナルにフィットしたスーツスタイルは世代や性別を問わず本当に常に、「カッコ良い」と思われ続けています。
そこに更に格上げ、差別化に貢献してくれて装いに知性ももたらしてくれるヴェスト!
「着たことないけど興味はある」
って方の御参考になったり、
「前と同じ形『で』良いよ」
って仰って御注文して頂いてた方にも
「次は変えてみようかな」
って楽しんで頂けるように様々なカタチと簡潔なイメージエピソードを添えましたので写真が多くてスクロールが大変かもですが何卒御笑覧頂けましたら幸いです。
現代では最もポピュラーなパターン。
襟が無く、2つボタンジャケットに合わせ易い様に第1ボタン位置も以降御紹介のパターンよりも比較的低め。
簡略感が強いことからスッキリとしたシャープで若々しい印象でしょうか。
カタチにもクセがないのでネイビーやグレーなど合わせ易い色で持っておけば使い回しも抜群でありながら、周囲より一枚上の差別化コーデも叶います。
同じ襟なしでもボタン位置ひとつで随分とテイストも変わります。
3つボタンジャケット用になるとボタン位置が一気に上がるんですね。
本来は下着であったシャツを隠す面積が大きいことから、よりクラシカルで格式が高いという考えもございます。
あくまでも「考え」であって現代に於いては「これが正式である」として明文化されたルールはないので「フォーマルシーンではこの3つボタン用ベストじゃなければいけないんじゃ…。」なんてことは思わなくても大丈夫です。
まぁ、迷った際の判断材料の一つとして活用しても良いかもしれませんね。
個人的にはこのカタチを選んでくださる方のセンス、好きだなぁ。
ホント、オーダースーツって性格や人柄が出ると思うんですよね。
みんな違ってみんな良い、そのものです。
雰囲気が少し変わり今度は襟付き。
ベストもルーツとしては元々お袖付きで上着の一種でした。
発祥国では「ウエストコート」なんて呼ばれます (ジョン万次郎的に言えば「ヴェスカッ」って聞こえます) が色々辿って調べる限り元々はジャケットみたいなカタチだったんですよ。
そしてジャケットはもっとフリフリの付いた華やかなステージ衣装みたいで着丈も長かった時代もあったりと、まさにオスのクジャク的発想で派手であればある程魅力的、ということにされていたそう。
まぁ、特権階級の衣服でございますから各々のアイテムが今普及しているイメージよりも豪奢で贅沢だったんザマス。
それが倹約主義のチャールズ2世による衣服改革宣言(1666年)なり何なりで袖や裏地も安価な生地に簡素化され、やがては袖すらもなくなったみたいです。
元祖ミニマリズム…。まぁ、でもその時に掲げたスタイルが現代のワールドスタンダードに於けるルーツになっているんですから当時にして既に「カッコ良さ」の本質を極めたスーパーファッショニスタですよね。敵わんわぁ…。
ただ、襟が残ってる分かつての上着としての名残を感じさせることから「脱いでも恥ずかしくないイメージ」や「クラシックさ」に一役買っているわけです。
こちらはノッチドラペルタイプ(ノッチ;切れ目等/ラペル;襟の意)。
「襟」と聞いて最も思い浮かべやすいポピュラーなパターンかと存じます。
胸ポケットは「無し」、「左のみあり」、「左右両方あり」で選択可。
腰ポケットにフラップ(蓋)も付けられます。
雨除けやホコリ除けの役割ですから、より屋外着(アウター)としての側面が強くなります。
要するに「人前でジャケットを脱いだとしてもベストを着ておけば失礼ではない」ということです。
インナーとしてもアウターとしても活躍する「3番ショート」的このアイテム、ディティールにコダワリを詰め込めば詰め込むほど優秀になります。
こちらはショールカラー。
かつてのガウン(室内着)がこの襟型であったことから、クラシカルで格式も感じさせながらどこか柔和でリラクシングな印象です。
これからの時期なんかはリネンやシルクなど軽くてリゾートチックな素材で楽しんでも良いかもしれませんね。
ヘチマ襟とも呼ばれます。
また、肩掛け(ショール)を連想させることから命名されました。
ピークドラペルのダブルベスト(ダブルオプション¥3,300)。
ここから雰囲気がガラッと変わりますね。
打ち合わせ(前立て)が重なることで保温性も増します。
和服もそうですけど日本人って本来はこういった打ち合わせの重なった衣服は似合いやすいと思うんですよね。
なんかお辞儀の似合う謙虚なエッセンスを感じます、この手のカタチには。
その反面、生地を沢山使っているせいか衣服自体はどこか優雅でラグジュアリー、とも見ることが出来ます。
追加料金あるくらいですから。
また胸元の厚みや奥行きも増すことから、威厳や風格、貫録を演出できます。
謙虚でありながら卑屈でない。
やせ型で傲慢でひねくれ者の私が大好物なカタチです。
私物です。
ダメな部分を隠してくれそうな希望の湧く服はやはり着ていて気分良いですよ。
剣襟仕様は威厳や格式、緊張感を感じさせるのでパワーが必要な局面の勝負着として是非。
ダブルは重厚だと捉えられがちですが、ジャケットを着た際にシングルベストよりもボタンが見えにくい為、生地のデザインによってはスッキリしたフォーマルライクな印象も与えられます。
またフロントカットされているのでクラシカルでありながら、ノープリーツのスポーティーな雰囲気のスラックスやジーンズなんかとも好相性です。
またまた私物。
新しい写真は用意せずに過去の写真ライブラリほじくり倒しながら過去記事に加筆しております。
ほら…、ベスト≒クラシック≒アーカイヴ≒ライブラリ…ですから…。
こちらはノッチタイプ。
ピークタイプより柔らかさや優しさを感じます。
逆にフロントがこういった水平のものはガッツリ2プリーツのスラックスと合わせて優雅で余裕な大人の男スタイルを楽しみたいものです。
本来、シャツもそうですがベルトやサスペンダーを見せてしまうこともドレスコードとしてはNGで、つまりスラックスの穿き口を隠すサイジングが望ましいわけです。
よってプリーツパンツの様な股上の深いサイジングのものとフロントが水平なベストの着丈がバッチリ噛み合った時、色気は爆上げします。
あと、私も着こなしの際に心がけている点ですけど脚の長さに自信がない方は極力「腰の位置」(スラックスのベルト)は隠した方がスタイルが随分とマシに見えますよ。
すごく良い意味で体のパーツをボカしてくれるんですよね。
よって例えばO脚を隠すのにも、膨張色である明るめのグレースラックスの方がスタイルアップに貢献してくれたりします。
収縮色のネイビーよりも。
収縮色は細身でシュッと見せてくれやすいですけど、身体のカタチも浮き彫りになりがちなんですよね。
そんな感じで、自分の体型と向き合った上で選んだ生地の色によってオーダー時のサイズセッションを変えてみるのも一興かな、と。
最後は襟なしダブル。
これまでに載せた全てのカタチが有する良さをまとめ上げた印象です。
狭めのVゾーンやダブル前立てからは格式を。
かといって、前述の通りダブルはジャケットを着た際にボタンが隠れることでコテコテした要素もないのでスタイリッシュにも見えます。
襟が無いことで変にアクも生じないことからオッドヴェストやカジュアル使いも見込めます。
懐かしい写真…。まぁ、これはシングルなんですけど…。オッドの例として。
裏地選びも楽しくて、これ見よがしに脱ぎたくなるかもしれません。
キュプラ素材推奨(ベスト単品注文時/オプション価格¥1,100)。
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