生地ブランドについて、マーチャントとミル【マーチャント】
銀座six店のブログをご覧いただき、ありがとうございます
スタッフの宮林と申します
といっても、ミルとマーチャントというワードは、ネットに溢れかえっていますので、今更って感じがします
今回は、私の個人的感覚ですが
生地ブランドの雰囲気について、ご紹介させていただければと思います
麻布テーラーは、取扱いの豊富さも魅力の一つです
当店にご用意がある生地についてご紹介させていただきます
宜しくお願いします
目次
・Harrisons of Edinburgh ハリソンズ オブ エジンバラ (英国)
・HOLLAND & SHERRY ホーランド&シェリー (英国)
ミルとマーチャントとは
ミルとは織物工場の事で、独自のブランドを持っています。規模に大小があり、牧場から経営しているところもあれば、糸を仕入れて、染色過程は他社へ依頼する工場もあります。以前にブログでご紹介させていただきました、生産地にミルはあります。英国はハダースフィールド、イタリアはビエラ、日本は尾州です。
マーチャントは、織物商社です。原毛を仕入れて、傘下のミルにそれぞれに生産を依頼します。世界中に販売能力のある商社はニーズをしっかりつかみ、ミルの特徴を活かし、魅力的な生地を生み出します。
マーチャントのご紹介
先に書かせて頂きましたが、マーチャントとは生地商社の事です。ここでは銀座six店で取り扱いのある大手生地商社をご紹介致します。
・Harrisons of Edinburgh ハリソンズ オブ エジンバラ (英国)
赤いブックが目を引く、ハリソンズ。英国の大きな生地商社です。1863年ジョージハリソン氏により創業された150年以上の歴史があるマーチャントです。ジョージハリソンは仕立屋見習いとしてキャリアスタートをしました。その後、布商人、帽子職人、ファッションアイコン、エディンバラの市長、スコットランド最古のチェス クラブの会長にまで上り詰めました。亡くなる前の 5 日間は国会議員も務めました。今も遊びと親族が最高品質とファッション感度溢れるアイデンティティを守りつづけています。
・DORMEUIL ドーメル (フランス)
続いて緑のブックが目を引くドーメル社です。1842年ジュールズドーメル氏は最高級の英国生地をフランスへ輸入する事を決意しました。この時22才との事です。その後兄弟のアルフレッドとオーギュストがビジネスに参加します。3兄弟のシンボルとして、3つの雄羊の頭で家紋を作成します。180周年を迎えた現在、ドーメル は一族の伝統と最新のテクノロジーを融合させ、時代の要求を先取りしています。ファッション業界の主要企業と密接に協力しながら、ハウス・オブ・ドーメル は、洗練された革新的なコレクションを開発し続けています。
・SCABL スキャバル (ベルギー)
次にご紹介しますのはスキャバル社です。1938年にオットー・ヘルツ氏が創業した本社をベルギーに置く生地商社です。ハダースフィールドにあるスキャバル社の織物工場は1539年創業の伝統ある工場です。またドイツのオーダーメイド工房とも手を結び、最終的にフランス語でSociété Commerciale Anglo Belgo Allemande et Luxembourgeoise (イギリス、ベルギー、ドイツ、ルクセンブルク商業協会)となり、略してSCABALになりました。傘下には200年の伝統がある英国マーチャントWAIN SHIELL(ウェイン・シール)もあります。スキャバルと言うと、私は画家のダリを思い浮かべます。1971年にサルバドールダリへ、メンズウェアのビジョンからインスピレーションを得た絵画セットの制作を依頼しました。ご興味のある方は是非調べてみて下さい。
・HOLLAND & SHERRY ホーランド&シェリー (英国)
1836 年創業、本社をサヴィルロウに置くマーチャントです。はじまりはスティーブン ジョージ ホランド氏とフレデリック シェリー氏が、ロンドンのオールド ボンド ストリート 10 番地でウールとシルクの生地を専門とするウール商人として事業を開始しました。1886年当時生地卸の中心地であったゴールデンスクエアへ事業所を移転します。1982年に本社をサヴィルロウへ移転します。1800年後半にゴールデンスクエアに創業された布卸商で現在も残っているのはホランド & シェリーだけです。数十年にわたり20社ちかくのウール会社と手を組みました。より上質な最高級生地の品質を生み出す為に常に研究しています。
他にも、ご紹介したいマーチャントはありますが、イタリアのマーチャントだと、カチョッポリ、ドラッパーズ、カルネ、アリストンなどなど。現在six店では取扱いがありませんので、本日は英国のマーチャントを中心にご紹介しました。
マーチャントの特色って結構感じられるものだと思います。お客様とお話して、具体的に生地を思い浮かべる前に「どこの生地がお好きかなぁ」って考えたりもします。お客様にハマった時は嬉しいです。
ミルブランドとマーチャントブランドの、それぞれのメリット
さて、今回は主にマーチャントについてご紹介させて頂きました。次回はミル、織物工場について主に書かせて頂きます。ミルの有名なところでは、イタリアでは、ロロピアーナ、ゼニア、カノニコ、英国では、テーラー&ロッジ、フォックスブラザーズ、スミスウーレン、ジョンフォスターなどなどがございます。
マーチャントの良さは、種類の豊富さと、ブランドの魅力を楽しめる事だと思います。「オールシーズンのスーツ生地」「細い糸のスーツ生地」「リネンの入ったジャケット生地」などの大まかなテーマに対して、それぞれのブランドがシリーズを展開しています。例えば「オールシーズンのスーツ生地」をご要望の場合、「このブランドは王道の英国スーツ生地です」「こちらのブランドは三次元的な色味が魅力で丈夫です」「こちらはエグゼクティブって感じで、高級感抜群です」「こちらはイタリアのお洒落感が魅力的です」などなど、ブランド事に特色があり、お客様に合ったブランドを見つけていただければ幸いです。
ミルブランドも同様にブランドの魅力はあります。勝手なイメージですがミルブランドは世界観というよりかは、伝統やクオリティで勝負してる感じがします。また、日本の生地商社様がミルブランドの中から厳選したブックになるので、1冊のブックの中に色々なクオリティが入っている事が多いです。ミルがすべて、そのような感じでは無いです。世界観を全面に打ち出している、ロロピアーナやゼニアのようなミルブランドもあります。ミルブランドのメリットは価格です。マーチャントを挟んでいないので同じクオリティでもお値段を抑える事が出来ます。
個人的に好きな生地ブランド 【マーチャント】
さて、マーチャントブランドの中から完全に個人的な好きなブランドをご紹介させて頂きます。と言っても全てのブランドで仕立てて気に入ってましたので、各ブランドからシリーズを一冊ご紹介させて下さい。
ハリソンズからは、FINE CLASSICS(ファインクラシックス)
しっかり目がつまった、370gmの冬物生地です。いわゆる仕立て映えをお求めの場合大変オススメです。グイグイにアイロンワークが可能なこちらの生地は立体的に仕立てるのに大変向いています。耐久性にも優れ、10年ではへたる事も無さそうな安心感があります。パンツもラインもキレイに出せて、しわへの耐久性もある素晴らしいクオリティです。柄もクラシックな定番を揃えています。特にチェック渋いチェックは最近見ないのでオススメです。
ドーメルからは、AMADEUS(アマデウス)
もともとは英国の高級生地をフランスへ貿易をはじめたドーメル社。現在はイタリア生地も収録していますが、ここでは英国生地収録看板商品のアマデウスをご紹介します。30周年を迎えたこちらのシリーズは英国の伝統的な工場で、純粋なエクストラファインウール(細くしなやかな最高級ウール)を使用して作られます。優れたドレープ性(落ち感)が生まれ美しい仕上がりですが、実用性も兼ねそろえているのが魅力的です。オートクチュール(最高級仕立て服)ブランドにも生地を提供するドーメル社のデザインはトレンドを取り入れ独創性も感じます。それでいて配色は色彩調和の基本がしっかり考えられていてスーツ生地から一歩踏み出した魅力を感じます。
スキャバルからは、ETON(イートン)
スキャバルからは、リニューアルされたイートンをご紹介します。SUPER130‘s(極細の繊維)を使用して280gで仕上げられたこちらのシリーズは触れるとご理解いただけると思いますが、本当に気持ちいいしなやかさがあります。美しい光沢と、細い糸で表現された繊細な柄が魅力的です。非常に英国らしいクラシック感のある色の中で、幅広い表現がされています。オールシーズンのスーツ生地として大変オススメです。
シェリーからは、CAPE HORN(ケープホーン)
カシミアが少しブレンドされた、私自身長く着用していた生地です。南アメリカパタゴニアの最南端にホーン岬という、世界的に古い貿易岬があります。「ホーン岬→CAPE HORN」が名前の由来です。緑豊かで、きれいな水に恵まれた大地で放牧されたメリノ羊は優れた長くて強いウールを生み出します。長く優れたSUPER100’sの繊維でしっかりした糸を作り、目の詰まる織り方で仕上げています。またカシミアを混ぜる事で、さらにしなやかになり、扱いやすく、気心地も良い生地です。さて余談ですが、ケプ岬の名前の由来を、1600年代初頭、オランダ東インド会社が海路を独占しており、極東に向かうにはそこを通るしかなかったのですが、1615年オランダ人ウィレム・スホーテンとヤコブ・ルメールが、未知の南方大陸への他の経路を探しオランダを出港しました。翌年、ヨーロッパ人で最初にこの岬を回ります。そしてスホーテンの生まれ故郷である町ホールンにちなみホールン岬(オランダ語でKaap Hoorn)と名づけられました。昔酔っぱらった先輩からそんな話を聞きましたが、完全に忘れてたので検索頑張りました。ブックの名前に少しストーリー性があったりするのも紳士服っぽいですよね。
今回はマーチャントブランドをいくつかご紹介させていただきました。次回はミルブランドをご紹介させて頂きます。
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