上月のきづき#マーリン&エヴァンスへ

上月のきづき#マーリン&エヴァンスへ

映画ハリー・ポッターで魔法魔術学校に向かう列車が出発する駅として有名な、ロンドンのキングズ・クロス駅。そこから約2時間で、イギリスのウェストヨークシャー州に位置するリーズに着きます。

リーズは羊毛産業で栄え、現在は商業都市として発展しています。リーズから更に在来線に乗り、たどり着いた無人駅のウェイクフィールドに降り立ちました。

そこから車で数分、ようやく目的地であるマーリン&エヴァンス社に到着です。

近年、様々な人気ブランドで採用されている、天然のカラーから作られるアンダイド・ブリティッシュウールなどを代表とする英国スタイルの素材を展開しています。英国服地好きの方でしたら、一度は耳にしたことがあるのかも知れません。

麻布テーラーの別注コレクションとして、新たにお取り組みを開始するので私も初訪問してきました。

マーリン&エヴァンスは、紡毛(ぼうもう)素材を得意とするメーカーで、梳毛(そもう)素材のコレクションはありません。ちなみに、紡毛素材とは、短い繊維をより合わせて糸を使って織られた生地で、毛羽立があるなどふんわりして温かみのあるものが多いです。反対に梳毛素材は、一本の長い繊維をクシでとかした糸を使って織られた生地で、なめらかなものを想像してください。
 
その、紡毛素材を得意とするメーカーに、昔は梳毛素材のコレクションが存在していたというのです。
分かりやすくいうと、「ハリスツイードにスーツ用生地が存在していた!?」みたいなニュアンスでしょうか(笑)。それは、マーリン&エヴァンスの物づくりに強く惹かれた、サヴィルロウのテーラーや職人が特別にリクエストして誕生した秘話があるというのです。

英国素材の特徴である、重さとハリとコシの強い素材ではなく、比較的細番手の糸を使うことで長いシーズン着用出来て、更にロンドンシュランクと呼ばれる最高ランクのフィニッシングを施すことで、光沢と風合いともに抜群な生地でした。このロンドンシュランクがまたスゴイ!

あえて、1910年に作られた木製のもみ洗い機を使用することで、独特の柔らかさと膨らみある風合いに仕上げ、縮絨といわれる生地を縮ませ安定させる工程も、一般的な乾燥機で強制的に短時間乾燥させるのではなく、時間のかかる装置で自然乾燥に近い時間をかけて生地にストレスをかけずに乾燥させることで、生地が居心地の良い方向に戻り生地が安定し、ウール本来の柔らかさを引き出しています。さらに最終工程(光沢、艶出し)を2回行うことで見た目もラグジュアリーな仕上がりです。

そんなヒストリーは、麻布テーラーの生地バイヤーもディレクターである私も大好き。食いつかないはずはありません(笑)。そのアーカイブ素材に着目して、別注クォリティとして復刻させました。麻布テーラーしか展開しない、別注コレクションは、赤い織りネームが目印です!

最後に、食いつくといえば、イギリスならではのスコッチウィスキー。帰りの電車は、単なる酔っ払いでした(苦笑)。

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