「麻布テーラーの人々」と題し、麻布テーラーと深く関係のある一線で活躍をされている方々にお話をうかがう本連載。今回は、大同生命SVリーグを牽引し、世界No.1のクラブチームを目指して挑戦を続ける「サントリーサンバーズ大阪」のゼネラルマネージャー、栗原圭介さんのご登場です。コート上の司令塔からクラブ経営の舵取りへと立場を変え、イノベーションに挑むリーダーが考える、「チームブランディングとスーツ」の関係についてお話をうかがいました。
1973年の創部以来、日本のバレーボール界を牽引し続けている強豪、サントリーサンバーズ大阪。2026年4月からは「サントリースポーツ株式会社」として法人化を果たし、クラブ経営としても新たなステージへと踏み出しました。そのチームの舵取りを担うのが、ゼネラルマネージャー(GM)を務める栗原圭介さんです。
現役時代はセッターとしてコート上の司令塔を務め、引退後はコーチやチームディレクターを歴任。2022年にGMへ就任すると、アジアクラブ選手権優勝、そして世界クラブ選手権3位という素晴らしい偉業へとチームを導かれました。
世界を目指す組織論から、チームの“顔”としての立ち振る舞い、そして一着のスーツがもたらす意識の変化についてじっくりとお話をうかがいました。
サントリーサンバーズ大阪と麻布テーラーのパートナーシップは2024年からスタートしました。近年、サッカーやバスケットボールなどでは移動時にスーツを着用するクラブが増えていますが、バレーボール界でその先陣を切ったのがサンバーズでした。どのような経緯だったのでしょうか?
栗原さん: 実は、今から7年ほど前に私が決断して、全移動時のスーツ着用を始めたんです。それまでのバレーボール界は、移動時といえばチノパンにポロシャツ、冬場ならダウンジャケットを羽織る程度のカジュアルな装いが一般的でした。スーツを着る機会といえば、年に数回のパーティーや祝勝会くらいだったんです。 でも、サッカーや野球などの他競技を見ていると、昔から移動時もビシッとスーツを着こなしていますよね。サンバーズが本格的にチームのブランディングを意識し始めた時期でもありましたから、『折角なら、移動もすべてスーツにしよう』と切り替えました。 何より、バレーボール選手は身長が高いですから、新幹線や飛行機でも非常に目立つわけです。折角目立つのなら、ファンや地域の方々に対して『紳士としての正装』であり、キチンとした身だしなみをお見せしたいと思いました。見た目の意識からチームを変えていこうという狙いがあったんです。バレーボール界では、今でも移動時にスーツを着用しているのは我々くらいではないでしょうか。
ご自身も、現在は試合や各種イベントなどでスーツを着用される機会が格段に増えたとお聞きしました。
栗原さん: そうですね。2026年4月にサントリースポーツ株式会社として法人化し、クラブ経営としての側面がより強くなりました。ありがたいことにパートナー企業様も約90社となり、会合や食事会、ミーティングなど、経営者の方々とお会いする機会が非常に増えました。ジャージではなく、スーツを着て臨む場が日常になったわけです。 チームの“顔”として見られている感覚は、現役時代よりも今の方がはるかに強くなりました。だからこそ、立ち振る舞いや身だしなみには常に気を配っています。特に試合のある週末は、私一人だけ同じチームスーツを2着用意して、金・土・日曜と着用しています。これがシーズン中の約7ヶ月間続きますから、シーズンごとに新調していただく麻布テーラーさんのスーツには本当に助けられています。気が引き締まりますね……ただ、未だにネクタイの結び方が一発でうまくいかずに苦戦することもありますよ(笑)
栗原さんは就任以降、「世界 No.1クラブになる」という明確なビジョンを掲げていらっしゃいます。伝統あるチームの意識改革は、どのように進められたのでしょうか?
栗原さん:サンバーズは1973年創部ですが、50周年を迎える直前(49周年のタイミング)で、「ミッション・ビジョン・バリュー」を一新しました。それまでは『国内で日本一になればいい』という目標だったものを、『世界に出て行こう!』という大きな目標に切り替えたんです。
目標を大きく変えると、組織によっては『無理だよ』、『何を言っているんだ』と反発や冷めた空気が生まれることもありますよね。しかし、サンバーズの場合はタイミングと結果が完璧に噛み合いました。ミッションを一新して迎えた50周年(2023年)のシーズンに、アジアクラブ選手権で日本勢初の優勝を果たし、アジアNo.1のタイトルを獲得できたんです。さらにその勢いのまま、同年12月の世界クラブ選手権で世界3位(銅メダル)に輝くことができました。
『自分たちが掲げた目標は、決して遠い夢物語ではない』と、選手たちが肌で実感できたんですね。私が提示したビジョンに、結果が奇跡的なタイミングで伴ったことで、積み上げてきた努力が大きな自信に変わりました。今では私から何も言わずとも、チーム全員が『世界一を目指す』という同じマインドで日々練習に向き合ってくれています。
なるほど。一方で、その目標が定着したからこその「課題」や、次の一手についても考えていらっしゃるとか。
栗原さん:目標を掲げて4〜5年が経ち、世界を意識することが『当たり前』になってきました。それは良いことである反面、選手たちの中に慣れや落ち着きが出てしまうという危機感もあります。常になにか新しい刺激を注入し続けなければならないと思っています。
そこで昨年、世界最高峰のリーグであるイタリア・セリエAのNo.1クラブ『シル・サフェーティ・ペルージャ(以下、ペルージャ)』とパートナーシップ契約を締結しました。本来、世界クラブ選手権に出場するためには、日本リーグで優勝し、さらにアジアクラブ選手権で優勝するという高いハードルを毎年越えなければなりません。昨シーズン、我々は惜しくも国内2位となり、現時点で今年度の世界大会への出場権はありません。しかし、ペルージャとの提携があれば、日本一になれなかったシーズンであっても常に世界最高峰のクラブと日常的に触れ合い、戦える環境が作れます。年に1度のエキシビションマッチ(昨年は日本で開催、今年10月はイタリア遠征を実施)だけでなく、今後は選手やコーチングスタッフの人材交流もスタートさせる予定です。
現場の勝負に関しては、信頼できる監督や強化責任者に全幅の信頼を置いて任せています。だからこそ GMである私の仕事は、ビジネスとしてのクラブ経営と、選手たちが常に世界を体感できる『環境整備』に全力を注ぐことだと思っています。
さて、ここからは今回新しく仕立てられた麻布テーラーのスーツについてお伺いします。完成したスーツに袖を通してみて、仕上がりはいかがですか?
栗原さん:格好いいですね!見た目の質感からして違います。オーダー時には小さな生地見本だけで選ぶので、ある程度の完成イメージは頭に描いていましたが、こうして実際に仕上がったものを着てみると想像以上でした。サイズ感も身体に吸い付くようにピッタリで、着心地もすこぶる快適です。
今回選ばれた生地は、非常に深みのあるシックな「グリーン」ですね。これから秋冬に掛けて活躍するウールサキソニー生地。ご自身で選ばれたとお聞きしました。
栗原さん:そうなんです。実は私、『緑』が昔から大好きで、自分にとってのラッキーカラーでもあるんです。だから見本帳でこの生地を見せていただいた瞬間、『よし、これだ!』と即決でした(笑)。普段のスーツ選びだと、デザインの効いた生地や攻めた色柄はちょっと自信がなくて、ブルー系やグレー系といった無難なものを選びがちでした。でも今回の生地は、深みのあるダークトーンのグリーン、しかもうっすらとチェック柄も入った新鮮さが魅力でした。一見するとグレーにも見える落ち着いた色合いで、遠目には無地に見えますが、寄ると綺麗なチェック柄が入っている絶妙なバランスに惹かれました。
栗原さん:ボタンは質感の良い水牛ボタンを選び、袖ボタンは重ね付けにしました。ポケットやベント、パンツの仕様まで自分で細かく選んでいくプロセス自体が本当に楽しかったですね。主張しすぎない『さりげないお洒落』が表現できましたし、ジャストフィットのサイジングも相まって、どこか『スーツ上級者』になれたような、GMとしての風格を引き出してくれる一着になりました。
ありがとうございます。10月24日からは、いよいよ新シーズンが開幕しますね。外国籍選手が5名に増え、日本代表の小野寺太志選手を新たにキャプテンに据えるなど、チームも新体制で熱を帯びています。
栗原さん:まさに今、新シーズンに向けたパートナーシップの獲得や、さまざまな企業様との折衝に駆け回っている真っ最中です。さまざまなビジネスの場や経営者の方々との会合で、この『世界に一つだけのスーツ』が大きな自信を与えてくれています。最後のひと推しを後押ししてくれる、強力な武器ですね(笑) チームとしても、法人化したサントリースポーツ株式会社としても、我々の目指す場所は揺らぎません。麻布テーラーさんの仕立ててくださった最高のスーツを身に纏い、堂々と胸を張って、チーム一丸で『クラブ世界一』という頂点へ向けて突き進んでいきます。
- 栗原圭介さん
- 1976 年福岡県生まれ。法政大を経て1999年サントリー入社。
選手引退後は指導者やディレクターを経て2022年、ゼネラルマネージャーに就任。アジア制覇や世界3位、伊・ペルージャとの提携を実現し、世界一のクラブを目指し組織強化に奔走している。