スーツのトレンドと自腹買いスーツ

朝晩は少しだけ過ごしやすくなってはきましたが、まだ残暑は厳しいですね。そんな中、麻布テーラーでは早くも秋冬もののスーツが売れています!暑い中、ご来店いただき誠に有難うございます!!!皆様もご存知のとおり、ご注文いただいてから出来上がるまで約3週間から4週間ほど日にちがかかります。ですから、今ぐらいにご注文いただくと、ちょうど衣替え時期に間に合う時期なのです。ということで、今回は今シーズンのスーツトレンドについてお話をしようと思います。

我々HQは、1年に4回ヨーロッパの国際見本市に足を運びます。まず、2月と9月に行われるミラノミラノ・ウニカとパリプルミエール・ヴィジョンなどのテキスタイルの国際見本市です。ちょうど今、竹本氏と川崎氏がこの見本市へ行っているところです。そして、そのテキスタイル見本市後の1月と6月に「ピッティ・イマジネ・ウォモ」というプレタポルテの国際見本市があります。こちらは、私が行っています。要するに、先に竹本氏がテキスタイルのトレンドを把握して、そのテキスタイルトレンドがどのようなスタイリングやルックスで提案しているか私が確認するという流れです。

シーズンに間に合わせるためには、先行してテキスタイルの仕込みを竹本氏が行います。それを私が把握した上で、トレンドルックスに必要な製品や洋品をバイイングしたり企画したりするのです。そのようなタッグを組むこと、はや○年!竹本氏のテキスタイルを選ぶセンスは素晴らしく、いつも勉強になります。こんなことを書くと、目の前の席にいるので恥ずかしいですが、海外出張中なので大丈夫です(笑)。もちろん「ピッティ・イマジネ・ウォモ」を見て、仕込んでいないトレンドが見つかる場合も稀にあります。「ヤバイ!竹本さん。○○足りないから私が帰国するまでに○○生地を仕込んでください!」というバタバタ劇もたまにはありますが(汗)。。。

という流れで2人が一致したスーツトレンドは「英国テイスト」です。さらに突っ込むと「英国カントリーを都会的にアレンジしたもの」でしょうか。製品染めや製品洗いといった数シーズン続いたダメージ加工から、ツィード」「シェトランドウール」「コーデュロイ」「フランネルなどの温かみのある綺麗目テーラードスタイルが今期のトレンドです。

ピッティ・イマジネ・ウォモにて> これらは少しカジュアルテイストですので、一般のビジネスシーンでは難しいかも知れません。しかし、竹本氏はこれらのテキスタイルをビジネスシーンでも楽しんでもらえるように開発済みです!

<麻布テーラー展示会にて>その中から、私がひと目ぼれして自腹買いしたスーツはこちらです。シーズンカタログでは上半身しか写っていませんが、このようにスーツで仕立てました。

この生地は、イタリアのマーチャントであるカルネ社が英国ヨークシャー州のメーカーに別注をかけたオリジナルのドネガルツィードです。このようなツィードは紡毛糸(ぼうもうし)を使用したジャケット向きの生地が多いのですが、これは梳毛糸(そもうし)を使用しているため、このようにスーツで着用しても上品な印象です。まさに、「英国カントリーを都会的にアレンジ」したスーツです。もちろん、ツィード素材なのでカジュアルな着回しはお手のものです。私は、ジャケット単品使いはもちろんのこと、タートルニットをスーツインして楽しみたいと考えています。スラックスにブレイシーズも忘れずに(笑)。

<梳毛(そもう)とは?>梳毛糸とは、 5cm以上の毛で作られた糸のことを言います。要するに「長い繊維で作った糸」です。長い毛を「くしけずって」作っているので、梳毛という訳です。英語ではウーステッド(worsted)と呼びます。長い繊維は折れ目がないので丈夫です。同じ強度でも細くできるので細番手の糸になります。スーツでは共地でスラックスも作るので、耐久性が必要になります。そのため、スーツに使えるのは梳毛糸のものが多いです。

<紡毛(ぼうもう)とは?>紡毛糸は「梳かない」毛で作った生地です。5cm以下の毛が混ざりあったもの、またそのような毛だけで作った糸を紡毛糸と言います。英語ではSpun Woolen Yarn, 略してウールン(woolen)と呼びます。紡毛が多い生地は、「ツィード、メルトン、フランネル」などです。

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