Natural Stretchって?

今回は少しウールが本来持つ機能とファブリックの加工技術について語らして頂きます。

WORALD TRAVELER シリーズのファブリックの多くはナチュラルストレッチという加工を施していますが、本来ウール繊維には天然の弾力性があり、自然のストレッチ性が備わっています。ではなぜ加工を施すのか?それは勿論、運動性やシワの回復力を高めるためですが、どういう加工なのかを説明する前に、まずウールの特性についてご説明致します。

羊毛(ウール)は、動物学的に「羊」に分類されるものの毛のことを指し、その他の動物、例えば「山羊」などの毛、つまり獣毛とは厳密に分類されています。羊毛は細くて縮れが多く、弾力性があるため紡ぎやすく、繊維原料として古くから人間に愛されてきました。

羊毛(ウール)がスーツ素材として大半を占める理由は第二の皮膚といわれるその特性によるものです。羊毛の表皮はスケールと呼ばれる、竹の子のようなウロコ状をなし、重なり合って規則正しく常に一定の方向へ突出しています。これによって繊維どうしが絡み合う性質が生じるため、紡績に適していると言えるでしょう。また一本の繊維の内部に質の違った二つの部分(好酸性皮質組織と好塩基性皮質組織)を持ちそれらの角質化の程度の違いによってちぢれ、いわゆるクリンプが生じます。これら大きく二つの特質により、羊毛で織り上げられた服地は以下のような性質が生まれます。

ウール繊維のスケール         ウール繊維クリンプ(捲縮、縮れ)

① 保温性

羊毛の持つクリンプ性によりウール織物の中には60%にもおよぶ空気を含有しているためその空気が断熱材の役目をし、最も暖かい繊維といわれています。

② 吸湿性

羊毛のスケールの薄い膜(エピキュティクル)は湿気を吸収し、すばやく外へ発散させる性質があります。体の汗が繊維自体に吸い取られ対外へ発散させてくれますので、暖かいばかりでなく夏は涼しい快適な衣料となります。

③ 撥水性

スケールには湿度は吸収するが水滴ははねかえす性質があり、外からの水分をある程度防ぐ効果があります。

④ 弾力性

羊毛の伸長率は30%で化学繊維の中でも最も伸び率の大きいアクリルでも同じ率だけ伸ばすのに、ほぼ2倍の力を要します。羊毛は少々の力で簡単伸びまた、元へ戻ります。この弾力性によって、着用時の運動性が高まります。またこの弾力性は衣料素材としての強靭さを持ち、柔らかな風合いを作り出します。

⑤ 可塑性(かそせい)

可塑性とは外力を加えた後に、その外力を取り去っても形状が元の戻らない性質の事を言い、特に羊毛は限界以上の熱と力を加えると完全に元の状態に戻らず歪を残します。この性質を利用してアイロン操作で微妙に収縮させることによりイセコミやくせ取りが楽に出来、人体に合った丸みのある服が作れます。

⑥ 染色性

羊毛は19種のアミノ酸の共重合体であるため、どのような染料とも化学的に結合し易く、高い吸湿性のため染料が繊維の中まで充分に吸収され斑なく染め上がるので美しい色彩の服地になります。

⑦ 難燃性

羊毛の成分は人体と同様な蛋白質なので不燃性繊維の代表で、火がついても自ら燃え上がる事は無く、繊維の端に黒いコブを生じて止まる。また燃えても有毒なガスを出さないため、人工繊維が発達するまでは、消防服やインテリアなどにも使用されることが多かった。

⑧ 難汚性

羊毛のスケールは水滴をはじく性質のため汚水がかかっても表面で止められ繊維内部までしみ込みません。また吸湿性が高いため静電気が起こりにくくほこりが付着しても表面にとどまり、ブラッシング等で落とす事が出来ます。故に繊維の中でも最も汚れにくいのは羊毛であります。

といった大きく8項目の非常に優れた機能をウールは兼ね備えているのですが、シワの回復力や運動性を高める事と衣服の「着心地」と「仕立て映え」において、ストレッチ性はさらに重要なファクターとなってきています。特にタイトフィットなシルエットが主流な現代においてその重要性はさらに高まっています。

ストレッチ性を得るためにはウレタン弾性繊維を用いる事が多くありますが、ここではワールド・トラベラー・カスタムで施されているニッケのストレッチ加工についてご説明致します。このストレッチ加工は毛髪のパーマネント処理と同様の原理で。特殊な還元剤と酸化を組み合わせる事で可能になったストレッチ加工です。この加工のもっとも重要な点は、ウールの織物の屈曲を化学処理で高めることでアコーデオンの様に織物が伸び縮み出来る織物設計にあります。この織物の形態は科学的にセットされているため安定しており、素材を引っ張る力が取り除かれると素早くもとの状態に復元する。設計の要因の寄与率が高いため、原料、糸から仕上げまでの一貫した技術が無ければ安定したストレッチ性を得る事は難しいとされています。

この様に、ウール本来の特性に加え、更に機能性を高めるためのナチュラルストレッチ加工がWORLD TRAVELER シリーズの一部を除くクォリティに施されています。一般的にウール素材はナチュラルストレッチが効いているとも言われますが、織組織や他の繊維を混用する事によって異なります。品質と同時にNatural Stretchと記載されている場合はこのような加工が施されています。

羊はかなり昔から飼育され衣料用繊維として人々に寄り添ってきたことが解っています。人類最古の集住遺跡からも飼育されていたと思われる羊の骨などが発見されており、聖書にもベツレヘム羊飼いが登場することから、昔から飼育されていたことがうかがえます。現代においても、あらゆる機能性を兼ね備えたウール繊維に変わる物がありません。そして現代の技術革新によってさら進化して、頑張るビジネスマンの傍らに寄り添っています。

合わせて読みたい記事

大・大・大好評のジャージー!!

オーダースプリングコート!!

CITY TARTAN