ファブリック・ウォッシュ

ここ数年来、洗い加工と総称されるナチュラルな風合いの商品がマーケットに溢れています。既製品では、ガーメント・ウォッシュ(製品洗い)ガーメント・ダイ(製品染め)と言われるものがその類のものです。そもそもこれらの加工はヴィンテージ感覚や、着用を重ねたコナレ感といった、あえて新品感を取り除き、脱力感を出し自然体を装うという狙いがあります。テキスタイルの世界でも、これに見合うファブリック、すなわち製品加工を前提にしたものが多く提案されています。

パリで行われるプルミエール・ヴィジョン素材展示会のトレンド提案より)

こういう柔らかい雰囲気のものがそれです。しかしながら、この手の商品は基本的にカジュアル要素が強い、コットン関係のファブリックが殆どでウール素材はあまり見かけません。それはウールの特性で水分を含んだ状態での摩擦によってフェルト化現象というフェルトの様な状態に変化するという性質があるからです。(この特性を逆に活かし、水を使用して毛織物を縮絨して仕上げた素材が冬のフランネルなのです。)特に夏場にはコットン系の素材の方が吸湿性や速乾性に優れていますので爽快感という点と洗い加工を施しやすいという点で人気が出ているのでしょう。しかしウール繊維にはシワの回復力があり、ドレープ性にも富んでいます。また職種にもよりますが、ビジネスにも耐えうる素材としてはウールを使う事がキーポイントとなってきます。そこで、何とかウールを使って夏場のウォッシュ加工的なものが出来ないかと試行錯誤しました。

そこで開発されたのがGRAND MARQUISの開発パートナーである中伝毛織と取り組んだウール・リネンのファブリック・ウォッシュです。上月ディレクターのブログでもご紹介がありましたが、5月8日(金)から受注スタートの新企画なので、少し掘り下げたお話しを。

このウール・リネンのファブリック・ウォッシュは水を使わず強い風を吹きつけて洗い感を出す、中伝毛織が誇る最新鋭設備、ZONCO(ゾンコ)というイタリア製のタンブラー・マシンを使用してその柔らかなコナレ感を実現しています。

このイタリア製のマシンはウェット、ドライ両用のタンブラー加工が可能な風合加工機です。従来のエアータンブラーは排出される空気の流れによってファブリックが高速で移動し,さらに後方にある衝突板にぶつけられることにより「ふくらみ」と「落ち感」のある風合を作る,というのが一般的です。しかしながらドラムワッシャー(水を使用したウォッシュマシン)に匹敵するような風合を作るのは不可能,もしくは長時間かかるという問題がありました。そして水を使うことはウール素材には適していません。

このZONCOに於いては比較的短時間で特徴的なふくらみのある風合を作ることが可能です。さらにこのマシンの最大の特徴としては,シワが非常に出来にくいという特徴を持っています。構造上、ファブリックを押さえつける箇所が無く,シンプルな構造とベルト&エアーのハイブリッド駆動構造により、ファブリックに経方向の無理な力がかかりにくく,ねじれもほとんど入らないため,麻などに入りやすい経ジワもほとんど発生しません。この最新鋭マシンによって今までにないシワの少ない柔らかな麻の風合いを実現しています。

というわけでウールとリネンをブレンドしながらタンブラー加工を施し、しかも麻特有の風合いをシワの軽減をしながら仕上げる事が可能です。ウールの落ち感、ドレープ性を持ちながら、麻のこなれた感じの風合いも楽しめるファブリック・ウォッシュを店頭でお確かめ下さい。スーツは勿論、単品ジャケット、スラックスにも雰囲気抜群の風合いで「程よい緊張感のある仕事服」お楽しみ下さい。カラーは5色展開でシングルスーツオーダー価格¥59,000+税からです。

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