上月のきづき #2024年春夏シーズのテーマ

上月のきづき #2024年春夏シーズのテーマ

新潟の田舎町で、突然変異的に洋服に目覚めたのが、小学校低学年。町に1件しかないジーンズショップでビッグジョンを買ってもらったり、アシックスの前身であるオニツカタイガーを寂れたスーポーツ店のワゴンセールで発掘してお年玉で買ったり。そのまま、小学生→中学生→高校生→大学生と洋服への変態化が加速度を増して、洋服屋になったが最後、50歳を過ぎても洋服への情熱だけは衰えことはありません(苦笑)。

そして、私の大先輩は、なんと幼稚園デビューという早熟、お洒落さん。それが、日本を代表するメンズファッションイラストレータである綿谷寛画伯です。

麻布テーラーは2007年より毎シーズン、綿谷寛画伯の書き下ろしたビジュアルを発表しています。麻布テーラーが目指す世界観として表現していただいていますが、もはや、イラストに負けない企画にしなければ!?と尻を叩かれているような逆プレッシャーを感じるカッコよさです(汗)。洋服が大好きでなければ、洋服を相当知ってなければ、ライフスタイルがお洒落でなければ、あのイラストは描けないと思います。

私達はこんな感じで画伯にイメージを依頼しています。

麻布テーラーはテーラーとういう名前が付いていますが、テーラー特有の敷居の高さや古さというものがないと言われます。テーラーをメインにしていながら、シーズン毎にMDがあることだと思います。MDとは我々の業界でいう商品政策のことです。ファッショントレンドを前提にしたお客様の欲求に適う商品とスタイリング計画が存在します。海外で開催されるメンズファッション見本市「ピッティウオモ」や生地見本市「ミラノウニカ」の世界基準のトレンドスタイルをキャッチし、そこで得られた知見を商品企画やシーズンルックに反映させるほか、シーズンテーマも掲げています。

2004春夏シーズンのテーマは、「Modern Heritage(歴史と革新のバランス)」にしました。数十年、時に数百年、古さの魅力にひかれるのは、ファッションの世界も同様です。積み重ねられた記憶や経験はもちろんのこと、センスまでも蓄積されています。移り変わりの激しいファッションこそ、時には立ち止まり、そのルーツを見つめ直す時間も必要なはずです。最新のファブリックのトレンドは、スポーティな機能素材と、英国的な柄を現代的に解釈した高級天然素材と、二面性の傾向に拍車がかかっています。さらに、ドレスウェアーでは久しぶりに、明るいカラーが復活しています。リネンやコットン、モヘアやウールなどのラグジュアリーな天然素材を活かす、落ち着きのある静かなライトカラーが特徴です。シルバーグレーやグレイシュベージュなど、色を混ぜ合わせた明るめの中間色が重要だと考えています。 装いテーマは、歴史と革新のバランスだったので、画伯に依頼したのが、「2024年パリオリンピックが舞台」「競技はシングルブレザーのルーツと言われているレガッタレース」「ロンドンからパリにユーロスターで向かい、パートナーとレガッタレース観戦へ」「観戦後にビストロでディナー」など、キーワードを出していきます。

シーンは、リアリティを追求するので、一応、私が訪れた箇所を指定するようにしています。これは、10年前のパリ出張中の写真です。若い(笑)。

ちなみに、秋冬シーズンのイラストは、ロンドンのキングス・クロス駅からリーズに向かう朝です。年を取ったな。。。

最後に、重要な事が漏れていました。ビジュアルに共通しているのは、女性がチラっと登場していることです。麻布テーラーが考える装いは、自己満足ではありません。本来、お洒落で格好いいビジネスマンやプロフェッショナルな方々は、自分に似合う装いを身にまといながら、ライフスタイルだってスタイリッシュであり、ほんのちょっとお茶目なはず。お洒落には女性は必要です。それは、洋服好きの画伯も私も共通する最重要点です(笑)。

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